隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

スカステ開局特番らしい、クリスマススペシャルをみた

宙組が雰囲気もあわせていちばんおもしろかったかな!

……
ほんっとに、各組こうも違うかってくらいに雰囲気とかなんか醸し出してるものが違うのってなんだろ、中学高校の、隣の組とうちの組で文化とかもなんか全然違うのとおんなじね!ふっしぎ~なんだけどヒトの集団ってそうなんだよね~~。

潤花と舞空瞳がどちゃくそかわいい

みんなかわいいのよ。
でもそういうことじゃなくて。求められるキャラとして、最適で最高だった。

星組宙組のこの若きトップ娘役2名のキャッキャ感とか、華やぎとか、なんか全部よかった。こういう特番は「バラエティ番組」なんだから、わいわいやってもらわないと間が持たない。盛り上げ上手の星組礼真琴のヨイショも効いて、舞空瞳は以前よりずっとずっときらきらと、舞台の上もそうでないところも、魅力が増してるなあと。
潤花はお洋服コーディネートからして大正解。そのまま銀座でも六本木でもトップになれてよってくらいに、ひと段階、華やかな装いを選択していて大正解。
決して他組の娘役が悪かったわけではないが、海ちゃんはもうちょっと出てきてもいいんだよ、とは思ったかな。つうか月組……。

地味って言われる原因は地味だからではない!月組

各組の感想。個人的にいちばん楽しみにしていた月組。最近ささやかれる地味なのでは疑惑の原因が明確であった。
深刻なツッコミ不足。
風間ひとりじゃそりゃーー無理よーーーぅ。

月城かなとも鳳月杏も、生粋のボケ・受けて返す側。相手からボールを受けてこそ鋭いパスを出すタイプ。海ちゃんは、余計なこと言って前にでない方がよいわよね、というおねーさんに徹していていささか面白味がない。海ちゃんは元々喋ると印象がなんか違う(意外とハイテンションというか)人なのだが、それを出すのはこの場じゃないと判断された模様。
それもこれも、あのややこしいカードゲームが思った以上に映像向きではなかったからなのでは……。

風間は昔100期の同期でやってた特番でのタカラヅカの演目あてみたいな早押しとかイントロ、すごい強かったものね。あの能力が健在で観ていて一番楽しかった。
この組はみんな体力自慢だと思うので、海ちゃんもいる志ジェスチャーゲーム的な動きがある方がよかったかもしれない。

あと地味に、唯一4名のみの選抜であったのが、なんか、妙なダメージを受けたよ…。来年はたぶん体制変わるんだろうけれども、上げてくるのは彩海せらか礼華はるか、その両方かもしれない。

王様のお出まし、雪組

雪組はなんか雰囲気違うなと思ったら東京で撮ってるからなのね。なるほどね。そりゃそうだわ。公演終了後なのかな、おつかれさまですって感じだったものの、チームワークの良さがあったかなあ雪組……、元々の性格なんだろうけど彩風咲奈の何にも動じぬ不動感が強くて(わんわんパニックにも全然動じてなくてビックリ)、今思えば、ギャーギャーうるさい系の前トップコンビをいい感じにおさえる役回りとしてはナイスバランスだったんだろうが、トップの立場に回ってしまうと色々、わかりにくいよ咲ちゃん!動じなさは面白いけど。
ここに気配りのできるソラカズキがいてくれてよかった。縣千は再下級生だから、いくら盛り上げようとしてもしゃしゃり出るわけにもいかないし、困ったろうね。

花組は真ん中のゲームへの熱が案外低い…

番手問題が微妙にざわついてる組のひとつでもある花組。まどかのアシストに徹する感じは宙組時代から変わらずなのでよいとして、柚香光にあんまり見どころがなかったような??
永久輝せあが思いのほか輝いていて、ああよかったなあと。ここは若手は、聖乃あすかなんだなやっぱり。彼女は顔立ちが相変わらずきれいなんだよねぇ…。
水美舞斗がいい感じに締めていて、そういうチームワーク感とか安定感はあった。けれど印象は薄かった…。

星組はわかっている

前の特番も思ったけれども、星組はトップで真ん中の礼真琴が率先して雰囲気づくりをしていく・盛り上げ役を買って出て場の空気を考えているから、それに後輩たちが乗っかりやすい→乗っかるから盛り上がる→そのうち本当に楽しみだして盛り上がるという流れがよくできてるなぁと。
司会進行役にしてボケの瀬央ゆりあがそりゃもう輝いていたよ。
あと組替えして初年末特番の暁千星、ありちゃんが!いい感じにいつもの、あの、急にオラつくというかあのかつてれいこさんとかが「ありちゃん!」てたしなめにかかるときのあのありちゃんが顔を出していて大変良かったと思いました。
極美慎は、その席に座れてよかったねえとしみじみ……。まだちょっとどマイペース感が漂っていたけれども、エンジンかかったら強いし、もっともっと面白くなりそうな超・体育会系アスリートぞろいの星組っていう魅力と個性が非常にはっきりしていた。ほかのどの組よりもカラーははっきりしていたかも。
あとこのメンバー、運動会めっちゃ強そう。

全員が同時にしゃべってトップがそれに笑っていられる宙組

そう。トップ以外の全員が同時にワーキャー喋って、それをトップスターが大笑い という関係性は実は貴重よ。どこの組にもこの域には達していない強固な絆があってヨシの宙組。ラストイヤーだものね…。
あとキキちゃん本来の(?)わがまま王女様キャラが降臨されていて、ライバル視する相手を潤花に定めて、大変スバらしかった。その横で甘えん坊三男キャラみたいな桜木みなとに、すごい出来のいい末っ子みたいな瑠風輝。課題のゲームを自分たちのモノにしていて、見ているこっちも楽しかった。ゲーム姿は一番楽しかった宙組
2016年あたりのすごろくだっけ、1期違いの、あの愛ちゃんとマカゼが変なコントみたいなお芝居やってたやつも面白かったし、宙組はいつの時代もコメディエンヌが揃ってるし、それは今後も期待できそう。

バラエティはもっとやって…

タカラジェンヌは忙しい。
スカステはおそらく出演料が出ている(組織としては別だからスカステが歌劇団に出演料を払っているカタチと思う)はずだし、いくら専門チャンネルとはいえ、好きにタカラジェンヌを出演させることはできまい。
各組、常に動いているけれども、常にひと組か…その半分でも公演が完全に休みな状態があって、そのメンバーがこれまでの路線とは異なるバラエティ番組やってくれないかなあなんて思う。
1年かけて各組対抗のスポーツ系対決(リーグ戦)とか…。何か技を競う系とか…。各組が直接「競って遊ぶ」機会が10年に一度の運動会だけってのが、なんかもったいないよねって思う。

とはいえ、番組は楽しませてもらった。新年はまたご挨拶番組か。











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『蒼穹の昴』のあそこのシーン

あれよあれよという間に彩風 咲奈演じる主人公は国を出る決意をする。夢と希望と理想を胸に、「あそこに行くんだ」と希った紫禁城から、何ひとつ夢や理想の通りにならず逃げることになる。でもその心中にはやっぱりあの日と変わらぬ理想があって…。

宦官

どうしても描かねばならない場面が、沢山あったと思うしそれを凝縮し濃縮してこの芝居が構築されていると思うが、原作を知らないひとりの観客であった私に絶対にみせなくてはならぬ場面、この作品の背景や世界を煮詰めた場面を指すなら、ここだ、と感じたシーンがあった。
それがクライマックス、政変により国をでるか、という梁文秀(彩風 咲奈)を思い、追いかけるように、紫禁城の内側、赤壁のあいだを必死の顔で駆けてくる李春児(朝美 絢)の、あの場面。

絶対あの場面が、蒼穹の昴という舞台の肝(キモ)であったよ。
高くって延々に続く赤い壁の内側にはいったら、死ぬか、死んだのと同じようなモノになるまで出てこれない…ましてや、宦官がまともに生きられる場所はあの赤い壁の内側しかなかった世界の物語だもの。朝美 絢は今回京劇シーンで名をあげたけれども、いやいやあの、ぼろをまといながら走り寄って行っていた昔の姿(一幕冒頭の当たりのシーン)と重なるような最後のシーンにつながるところで、わざわざあの赤壁紫禁城の内側の世界を再現した場面は、どーしても、どーーーしても見せたかったに違いない。

あそこにも久城あすとか

あす君は相変わらずあっちこっちにいたような。通し役としては日本人の記者役で、後半何気に重要なキャラだったけど、芝居の幕開き、居酒屋宴会シーンにもちゃっかりいたし、なんかそこら中にいたような。気のせいかな。
あと、強い印象を残した汝鳥伶の伊藤博文。女子が演じているのよって誰も信じないと思う。伊藤博文過ぎて吹いた。

何かと話題の、期待の若手華世 京は、私にはどれがどれやらでわからなかった。本公演は原作ありきで初戯曲化の作品だが、話がでっかすぎて役を書ききるわけにもいかず苦心した爪痕が感じられる作品で、諏訪さきの「いなかもん」という意味なのか訛りの強い青年も「主要な脇役」のひとりであったが、彼の印象的な役に対して、たぶん重要だったんじゃ…?ていうミセス・チャン(夢白 あや)がドヤ顔の美女の脇役すぎて、何だこの扱いの差はと。キャスト順とあってないのでは。
たぶん、違うんだろうな、たぶんもっと裏で凄い色々やってる子なんだっていいたいんだろうな、と察してあげる優しさを持って観る必要があった。そういうのはこの二つの役の描かれ方だけでなく、他の役にもちょいちょいあったな。

それでは一曲…西太后で…

専科さんが歌ってくれるの、私結構好きで。とはいえこんなにたっぷり聴かせてくれるとは思わなんだ。やっぱり本公演のヒロイン1位は西太后だったなぁと。
この人物を大きく重く描かねば順桂(和希 そら)や袁世凱(真那 春人)、楊喜楨(夏美 よう)らの動きの動機が弱くなるし。
物語の中心はやっぱり西太后だった。

ソラカズキ

順桂(和希そら)の役は、超優秀な若き官吏のひとり。出てきた瞬間から、名誉ある科挙の3位内の成績で皇帝への御目通りまで叶って…
ってのに、そんな己が誇らしくも心から満足はしてないなーって。
ソラカズキは出てきた瞬間から目で、表情で、顔の角度やほんの少しの影あるお芝居で、それがああいう破滅の道を選択せざるを得なかった役なのを、もう、素晴らしい精度で演じていた。

事前に和希そらが出演した番組で、「阿片窟のシーンは、順桂の理想や意志を阿片窟の女たちが邪魔している、順桂を堕とそうという」てなようなことだと語っていたという情報を得ていた。あのシーンの最後に、順桂が握ってた糞の塊みたいなのが爆弾だと気がついたのは、私は、事が起こってからで…
それで阿片窟シーンが誤解されがち(阿片窟の連中に爆弾握らされた的な)てことで、解説されたのかと納得。
ちゃんと、そうじゃない、あれは最初っからあの順桂という役が持っていた仄暗い情熱の先にあった行動だと、しっかりと伝わってきましたよ。

やっぱりカチャ凄い

李鴻章(凪七 瑠海)はいいお役だった。これまたもう1人の主人公みたいな大事な役だし、本当にかっこよかった!!
カチャは身体の動かし方もなんというか、ほんとに、磨き抜かれたタカラジェンヌだなぁとしみじみ感じ入る。
小さ過ぎるお顔はけっしてお髭や軍服が似合うタイプではなさそうなのに彼女は着こなすし髭もイケメンになる。それこそ男役の力と思う。

さよなら朝月希和

フィナーレの朝月希和はトップスター彩風咲奈に優しく見つめられていた。希和ちゃん、ホルターネックの、肩出しドレスお似合いよね。首、肩、腕…完璧!!
本当に夢のような娘役さんで、名前の如く朝の月のように清々しい清らかな美しさと強さを兼ね備えた娘役さんだなぁと、みるたびに綺麗だなって思わせてくれる素敵な娘役。

皆さま素晴らしい千秋楽を迎えられますように…!



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雪組『蒼穹の昴』を観た。清朝はややこしいがそこがいい

壮大な小説をギュッと一本モノにしてドーンと予算と専科突っ込んで他には真似できぬ舞台になったよ、という、現雪組の本命公演と名高い「蒼穹の昴」を観てきた。チケットが一枚しか取れなかったので最初で最後の生観劇となり、トップ娘役朝月希和ちゃんを生で観られるのもこの日が最後となった。すばるの星のように綺麗だった。

最初に、私の知識は…

原作は知らない…。
ただ浅田次郎先生が大変な清朝時代の研究者というか、大ファンというかマニアというか愛のある方であり、何度も何度も紫禁城故宮博物館にも足を運び、確か今年、紫禁城の一角に見つかったというか、解明された乾隆帝時代(だっけ)の、国中の不思議な奇岩で出来た岩の庭園や初めて内装が明らかになった部屋を再現したNHKのドキュメンタリーにも出演されていて博識ぶりをチラ見せされてたのを、私は観ていた。

この4、5年か、日本でも中国歴史ドラマブームもあり清朝紫禁城を舞台にした名作大河ドラマも沢山あり、私もそのいくつかを観て圧倒されつつちょっとした知識を得ていたりもしている。たぶん、多くの人もそんな感じではなかろうか…。

なので、舞台装置をうまく使っての紫禁城の場面演出は素晴らしかったし、紫禁城だけではないどの場面も隅から隅までたのしめた。観るだけで豊かな気持ちになれることは、観劇の大事な魅力と思う。華やかであることは舞台において大正義!

ヒロインが4人いる

観劇に際して、ネット上のファンの方々の感想は色々チラチラ楽しく読ませていただいていたものの、あんまり予備知識なしでみようと思って。
※でも一か所、阿片屈の場面の意味を和希そらが解説していた言葉は覚えていてよかった。
観ていて思ったことは、まあタカラヅカスターシステムってものは、こんなところでも「枷」になるよな、ということ。
配役にしろ娘役の扱いにしろ、舞台・芝居をよくするためには最適な作りをしたいだろうが、スターシステムに配慮して演出したりを考えるとちょっと、観ているこっちが配慮して感想を持たなくちゃならないような気になってくるところがね、あるなぁと。

序盤からの主人公は、李春児(朝美 絢)。京劇シーンをピークにその後はスッと脇役になっていった。
中盤から後半にかけてようやく、梁文秀(彩風 咲奈)が主人公らしくなってきて、最後は真ん中にたつ大河ドラマの主人公だった。このキャラ、科挙を首席で合格するってことははっきりいって天才というより異能者のレベルで驚異的な頭脳を持っているという人っていうことなんだよね。

昔、藤田あつ子先生による煌如星シリーズの漫画でその辺のことを学んだのでそのように捉えた。なお煌如星シリーズは清朝を舞台にし、絶世の美少年 煌如星(こうじょせい)が15歳で科挙に状元(じょうげん=トップ成績)で合格し官僚になり、殺人事件の謎解きなどをするという読み切りミステリ仕立てかつ中国古代の様々が学べるという最高にイカした漫画なので、今回、蒼穹の昴での装置も衣装も流用できるしすごくヅカで舞台化できる面白い漫画なのでは…とちょっと妄想している。

まあそんな、異常に頭がいい主人公は、だからこそ余計なことをしないしバカなこともしないので、中盤まで受け身にみえてしまった。これは仕方ない。だが咲ちゃんの最高のビジュアルがその分の穴埋めをして解決していたと思う。立っているだけで目立つし、どこのラインも美しい。本当に圧倒的ビジュアルであった。

で、そんな主人公に対して、私の観劇中に感じた限りでは、ヒロインが

西太后(一樹 千尋
・光緒帝(縣 千)
・李春児(朝美 絢)
・李玲玲(朝月 希和)

と、いっぱいいたなぁ…と感じた(性別不問)。

顔以外を顔以上に褒めちぎるときがやってきた

私は一部のあーさファンが嫌いである。なぜならSNSやらに彼女の写真を無断転載しまくるから。あれは本当によくないことなので、そこがとっても嫌。
何故愛するスターの権利を侵害するのか。そういうところだぞ。

で、あーさ自体に対しては、オラ芸に走る彼女(彼女だけではないけれど)は全く好みでない。歌のクセも好きじゃない、んだがコーラスはぐっとキレイなんだよなと今回改めて思った。
あとあのビジュアルイメージからの配役…、確かに黒い天使もやんちゃなハイスクールボーイも似合うんだが、魔法使いとか狐は全然好みではなかった(演目が)。
今まで一番好きだったのはワンスのキャロル。男役10年過ぎてのあの大きな女役、柔らかそうなフォルムが完璧で三白眼のクソ彼氏ともお似合いでとっても良かった。

でも今回の李春児役こそこれまでで一番のはまり役、当たり役ではなかろうか。
ぼろをまといながらの登場シーンからずっと目にいっぱい光をいれてキラキラさせていて、その愚かで弱い存在こそがいとしさを感じさせる貧しい子のなんとまあ。
なんとまあ、はまることか。単なる成り上がりではなく、宦官になって成り上がるあたりがまた、これは浅田次郎先生のキャラ設定がすごいところであり。
宦官姿も様になっていて、元々小柄で女っけの強い外見が役にも大いにプラスで。
彩風 咲奈の梁文秀といい感じに対照的な外見とキャラで、引き立てあっていた。


他にもたくさん、見どころはあった。見どころはあったんだよねぇ見どころは……。


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月組から動く新体制の予兆

月組、次回本公演にて、組長をはじめ7名の退団が発表、集合日付で若手107期生(まだ研2か)が1名の退団と、世代交代というか…組替えはじまるよの、事前アナウンスがされたような気がする発表があった。

しかしこのメンバー…

光月 るう(88期)
千海 華蘭(92期)
朝霧 真(97期)
清華 蘭(98期)
結愛 かれん(101期)
花時 舞香(101期)
蘭世 惠翔(102期)
朝雪 薫(107期)※宙組「Délicieux!」で初舞台


月組の公演が好きだったファンは悲鳴あげるよねあげたよあげた。
一方で、あー…そうか……そうですか……と、本当の本当に予想外のありえないでしょといいたくなるような卒業生は、いないのよね…。さみしいけれど。

集合日付退団となった107期生の朝雪 薫さんは、ついこの前あのマカロンタワーみたいなので華々しく初舞台を飾った107期のひとりだったのね。たしかあれ難易度高い初舞台振り付けで、見ごたえあった。舞台人はじまりが困難な時代の突入と重なり、たくさん考えた末のことと思う。一度は夢とあこがれをかなえたのだから、きっと未来も明るいことと願う。

組長さん

月組は何かと人事が闇闇いうが(雪組花組星組もなかなかでは…)、トップ人事は歌劇団の上演スケジュールと切っても切れない関係があるので多少ファンと思うことが違うものだと思うし、それをいうなら90年代の研7抜擢からはじまっとるしここ数年の波乱は今更なのでいいとして、気になるのはどっちかといえば、管理職である組長交代が早いのかな?ってのがここ何年かの印象。
というかこの月組の組長交代ニュースによって逆に組長の存在を意識するようになった。昔は、ベテランの専科さんみたいな組長さんがずっといなかったっけ、ていう印象から基本的には全組の組長が若返っている。ザ・組長ってのは今のメンバーだと宙組寿つかさ組長くらいか。ほかの組長さんは、年数に関わらずただただ、若いという印象。

なかでもるうさんは、就任当時からずっと若かった。だから、芝居でもかつての組長さんよりもうひとつふたつ、出番の多い役をやっているなと、いつも思っていた。月組芝居のかすがいって感じ。

実際組長さんってのはよく変わってる

5年以内で変わるなんて早いわ、なんていうけれど私の知っている90年くらいからさかのぼったら(出典はウィキペディア。)

月組歴代組長(90年~)
汝鳥伶(1990〜1993年)3年
邦なつき(1993〜1996年)3年
汝鳥伶(1996〜1997年)1年(再就任しその後専科へ)
立ともみ(1997〜2002年)5年 
夏河ゆら(2002〜2006年)4年
出雲綾(2006〜2008年)2年
越乃リュウ(2008〜2013年)5年
飛鳥裕(2013〜2016年)3年→その後雪組へ異動し雪組組長に
憧花ゆりの(2016〜2018年)2年
光月るう(2018年〜2023年)5年

…るうさん、全然早くなかった別に。

ちなみに花組
北小路みほ(1990〜1991年)1年
未沙のえる(1991〜1996年)5年
星原美沙緒(1996〜1997年)1年
磯野千尋(1997〜2000年)3年
夏美よう(2000〜2012年)2年
高翔みず希(2012〜2022年)10年
美風舞良(2022年〜)1年~

雪組
真咲佳子(1989年〜1991年)2年
京三紗(1991年〜1996年)5年
箙かおる(1996年〜1998年)2年
飛鳥裕(1998年〜2012年)14年
梨花ますみ(2012年〜2019年)7年
奏乃はると(2019年2月11日〜)3年~

星組
葉山三千子(1979年〜1993年)14年
一樹千尋(1993年〜1996年)3年
夏美よう(1996年〜2000年)4年
英真なおき(2000年〜2012年)12年
万里柚美(2012年〜2020年)8年
美稀千種(2020年9月21日〜)2年~

そして宙組
大峯麻友(1998年~2002年)4年
出雲綾(2002年~2005年)3年
美郷真也(2005年~2008年)3年
寿つかさ(2008年5月19日 - )14年~

90年代からの全組歴代組長は、基本的にみんな似たような年数で入れ替わっているものの、90年代からこっち、ほかの組には一人はいる二桁年数お勤めの組長が、月にはおらんのね。
だから総じて入れ替わりが多くみえる…。でも、それでは就任年数2年や3年が短いかというと、歌劇団全体では全然珍しくもないわけで。
その後専科にいかれ、いまだにご活躍の名前も多数あり、だからこそなんか組長さんってのはずっといてくれるでしょって思いがちなのかな。

大異動がまたあるか

しかし月組がごっそり減るとなると管理職も含めて、中堅や若手も含めて、色々とシャッフルがあるのかなと思う。
管理職は年功序列のほうが絶対によい。全体号令をかける立場のひとが、一番の年長者、歴の長い先輩というだけで、全体がすんなりまとまることがたくさんあるものだ。
そうなると月組、さち花ちゃんが組長にあがるにしても、副組長が現在2番手を務めるちなつさんになってしまう。さすがに多忙になるしちなつさんが副組長に回り羽根を降ろすとは考えにくく…、紫門ゆりや月組復帰説がちょっと現実味をおびてくるではないか。

そして、ほかの組に関しても、このくらいの退団はみんな控えているんだろうと思う。

花の盛り

しかし、卒業がさみしい一方で、やっぱり、女性の心身が充実している時間の短さをどう使うかってのは、最優先で自分のために使うべきであり、タカラヅカで生きることは実に多くの縛りを己に課すことと思うので、みんな、それぞれの最適な時期を見極めたんだろうなと思う。
無論、それぞれのジェンヌさんが様々な理由で卒業を決めたことと思うけれども、いわばアスリート、競技選手のような厳しい世界と思うので、長い短いに関わらずその少女時代から青春をささげた日々に別れを告げるその最後の日まで、客席からただただ拍手を贈りたい。





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コロナと物価高と舞台製作事情

つい先日、知人が製作に絡む舞台を観劇してきた。中劇場作品でかなり凝った演出に感動した。
舞台装置はよくある白い壁とか白い箱を組み合わせて場面転換するやつ…に一見思えて、実は大変意図的にそれらを使い随所に工夫がされていて、映像や光、照明を上手く組み合わせた、大変に斬新な見映えであった。というか演出上の映像の巧みさでいえば、ヅカの舞台でよく使われる映像の多くよりも上であったなぁ。ハイローやアナスタシアなど宙組公演の映像演出はどれもいいけど、ときどき…いまいち…なヅカの映像演出。たぶん、あの舞台がでっかすぎてちょっと難しいんだろうな~。

で、まあその知人の舞台で聞いたビックリな話。

劇団存続の危機

充分に人気の劇団である。固定客も沢山。けれどコロナで長らくまともに公演ができず、懐事情が厳しくいよいよ本当に本当の存続の危機だという。チケット完売しようが、やっぱりグッズ製作してそれを買ってもらわないことには、利益にならないそうな。

この「利益はグッズが大きい」件は、たとえばドーム規模でライブやる人気ミュージシャンでも同様らしく、こうした状況じたいは昔からよく聞く話だけれどもしかし、その後にとびでてきた現状のお話に驚き。
「舞台の骨組みや装置の大部分の素材である木材の値段が、コロナ前より3〜4倍なことも」
という。
倍なんてものじゃない高騰っぷりなんだそう。
そういえば、その公演のチケット代もヅカのS席ほどじゃないにしても、それに近い値段であったな。確かコロナ前から数千円上がっている。
それでもギリギリなのだろう。
私の周囲には、値段が高いからというごく単純な理由で劇場に行かない層も一定数いるし、モノの値段というものは本当に難しい。適切な価格でも、価値を決めるのは主観や偏見だったりしてしまうわけで。

多分豪華さピカイチのヅカさん

新作主義のタカラヅカ。再演の場合も何十年か前のものであったりして、去年の新作を今年も…なんてことはけっしてやらない。なので基本的に倉庫を圧迫することしかしない大道具に関してはほぼ、都度作成し、その際に使う材木などは惜しみなく解体して再利用しているものと思う…のだけれども。

タカラヅカばかり見ていると忘れがちだけれども、あんなに舞台が回ったりセリが色々あがって、その都度舞台装置も早替えして…なんてことを日々やっている劇場はそうそうないのではと思う。

私は小劇場作品も観るけれども、やっぱりのっぺりした四角い箱と板を机や椅子やに例えて…みたいなものよりも、凝った造りの舞台上を観るのが好き。
歌舞伎を観るときも細かい家財道具や奥の床の間をみたり、後ろの風景の展開とか、そういった大小の装置、そこに散らばる小道具なども、舞台の大事な楽しみのひとつだと感じている。
最近ではロマ劇の、あのアパートの部屋は色々凝ってたなぁ、と思う。

実はお衣装は外注

タカラヅカといえばあのお衣装。毎回新しいお衣装と既存のものをうまく混在し、時に各ジェンヌの身体に合わせてつくったりと、贅沢なことをしているのは、華やかな衣装があってこそ舞台が映えるからだと、それはもう毎回感動するポイントのひとつ。

全部お衣装部で作っているものと今まで思っていたけれど、実は外注先がいるのですね。大阪の老舗の有名な会社さんなのかな。特殊といえるあの燕尾などを作られるには、こつを知っている職人技が必要であると思うし、それらが今後も継承されていくといいな、なんて思う。
舞台衣装って実はいろんなパターンがあるのかもしれない。タカラヅカの番組では、衣装部の紹介ばかりで、全部内部でと思われがちだけれども、豪華豪華と評判をとっている雪組蒼穹の昴」も衣装は外注やレンタルもあるそうな。
餅は餅屋。あんな特殊なお衣装や髪飾りを借りられるのならそれに越したことはない、とも思う。内製が絶対正義ではあるまい。
ときどき日比谷シャンテに展示されているお衣装、寸法がとんでもないなとは思う。大体みんなほっそいの。

そういえば以前仕事で、展示会に出展する際にコンパニオンを入れるのに、オリジナルの衣装を作ろうってことになって、それはレースクイーン程じゃないがそれなりに体の線がわかる衣装で。マーケティング担当が「イベントコンパニオンの体型って一般人のスリム体型ともちょっと違うスリムさだから、それがわかっている制作会社があるんだよ」と教えてくれたことがあった。
誰でも着られるように緩めに作るわけにいかないのである。見映えが違うから。タカラヅカのお衣装のあの細さはやっぱり特殊だろうなぁ…。

男役スターが大階段から降りてきて魅せるシルエットもスマートで美しいけれど、そのあとに、デュエットのために1人降りてくるトップ娘役が最高に美しいラインをシルエットで魅せてくれるじゃない。あれ、本当に綺麗で毎回ため息がでるけれども、その美しいラインを作っているのは娘役の細すぎるスタイルとそれをなぞる美しい衣装なんだな。
夢の舞台とはよく言ったもんだ。





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エルピディイオを観た感想(2)君は薔薇より美しい

観劇の感想を書こうと記憶を呼び起こすと、私にはフィナーレの白い美しすぎるお衣装に身を包んだ鳳月 杏しか浮かんでこない。
けしからん。

あの表情が出る

ちなつさんは主にフィナーレ群舞などでイケない顔をするが、今回のように真ん中でクールに踊る場合のみ大変いけない表情をなさる。
あの表情で見つめられたら焦土と化すので劇場は焦土だった。フィナーレ。だから静かだったんだと思う(みんなオペラをあげていただけ)。

咽喉から悲鳴が出てしまうほど美しかった。お衣装は誰?加藤真美先生?でしょうね最高ォォォ
いやあ
過去に観てきた全部を、全部を並べても最高だったかもしれない…。あれちなつさんに着せてあんな扇持たせて躍らせたの誰?!謝珠栄先生?
最高ォォォ!!!

私、どうせ大して見返さないからDVDブルーレイとかあんまり買わないんだけどエルピディイオは買うから早く出して。まだ?まだなの。
フィナーレを目に焼き付けるためだけに買いたいしていうかあのお衣装のプロマイドないの?ないの??
劇場にはなかったと思うんだけど…

…ないの???


ないの???


あのフィナーレを観るためだけでも価値ある作品よ。で、実際は他にも価値があるからもう最高かよ。出島もそうだったらよかったのにね

謝 珠栄 が作るとこうなるのか

今回、私はKAATで観劇した。そして序盤から、ああなんと臨場感のあることか。これは演出だろうか?と思ったが劇場サイズが主因であることにしばらくして気が付く。
役者が上手から下手から出入りする際の足音や、暗転し場面転換する際に夜光塗料で光るバリやらは、大劇場では一切ないものなのよね。これが、タカラヅカの東西大劇場とは異なる臨場感を客席に伝えてくれた。
私は2階席のほぼ最前列(記憶が飛んでいるのと非常に視界がクリアだったので、何列目か思い出せないほど見やすかった)で観ていたけれども、それでも舞台からの距離が近い!
ていうか宝塚の劇場はやっぱり遠いんだなあ。あとやっぱりでっかいんだな……。別箱で宝塚を観るたびにこの感想を抱いている気がする…。

ショー作品や大掛かりな舞台装置、大階段などやっぱり宝塚は専用劇場で観るのが一番だとはおもうが、こうして劇場の箱サイズにぴったりのお芝居を観ると、ああ別箱で臨場感たっぷりの芝居とジェンヌを鑑賞する機会は大いに価値あるものだと思いなおす。今見たものが一番いいってその都度思えるって幸せ。

そんな移り気な観客の心もよくわかっていらっしゃるだろう、謝 珠栄先生は、この芝居をつくるにあたって劇場空間のサイズ感も充分に意識されたのだろうと思った。そうしたしっくり感・ぴったり感を感じた。
そして序盤から暗い照明のなか、たびたびターバンのようにスカーフを巻いたダンサーが踊ってみせるのが、やけに効いていた。その表現を言語化する能力は私にはないけれども、無駄でもなければ邪魔でもなくて、ひどくしっくりきた。
あと、最初に出てきたこれらダンサーにおだちんを空目してしまったがあれは誰だったんだろう。るおりあかなあ?

ロレンシオのパトリシアへの想いが閾値を超えて、男として彼女に触れキスをするシーン、控えめなラブシーンながらちなつさんは役柄にぴったりの加減の情熱をみせ、すごく素敵なシーンになっていた。謝先生、どこまでも品が良い。
あと女性というものの描かれ方が他の先生よりずっとずっと、品がよいというのかみんないい子のように感じた。

この芝居で目立つ女性の役は、
職業婦人マグダレーナ(白雪さち花)
酒場の娘ベニータ(きよら羽龍)
その友人エステル(蘭世 惠翔)
踊り子カルメン(妃純 凛)
貴族の出の既婚者パトリシア(彩みちる)
あたりか。

どの女もそれぞれ生きているが、難しいこともちゃんと考えてたり全く考えていなかったりもするが、善なる人々ばかりである。これは男役たちも同様。
生きづらさを感じてレジスタンスになる者たちも含めて、まじめゆえ。月組芝居だから余計にそう見えたのかな?

各キャラクタたちの善なる存在感と人の動きの美しさ、振り付けの美しさなど、全体的に、とにかく、謝 珠栄先生にしかできないものがあったのは間違いない。
正直、これまで大劇場で上演されるいわゆる本公演に関して、ファンが愛情を込めて愛称で呼ぶ様々な演出家の作品についてはそこまで個性を感じたことがなかった
(作者の手による違いは感じるが、○○らしい~てのは、はっきりいってそこまで意識させられたことがない)。
謝 珠栄の組み立て方法は他の演出家とは違い、ハッキリとした個性となっていることを今回強く意識させられ、本公演でよく名前を聞く演出家たちにこの芝居も振り付けも作れないよなっていう謝 珠栄先生ならではのものを感じたのだ。それは他の作者のものとはまた全く別の色合いで、今作、とても、ぼーっと観るだけの消費者である私のような観劇者への格別な思いやり・配慮があったように思う。なおこの「違い」は当然ながら優劣を示すものではない。

実はあまりついていけてなかったところが。

冒頭から始まるスペインの事情に関して自分は全く明るくないので、正直いって台詞で説明されている事柄はよくわからなかった。その台詞を追いかける余裕もなかった。
ポンポン会話が進んで楽しげな群衆芝居がテンポよく進むからである。でもそこでやり取りされていることってものすごい大事なことなのね。それはわかった。
さりげなく出てくるスペイン地方料理の自慢大会もたぶん、スゴイ大事なメッセージあるんだろうな。てかスペインの国内事情は非常に非常にやっかいであったような。

スペイン史がカンタンにまとめられたサイトを見てみても、紀元前からすでに色々あり過ぎて、何度も民族が入れ替わるほどのややこしいことの連続で、現代の民主主義国家がはじまったのがわずか40数年前から、といえば、どれだけ波乱万丈な国かわかるというもの。
エルピディイオたちの人生があったのは、軍事政権があり、そして人々の生活は戦前であり戦後であるような時代だった、ということかな。

あらためてロレンシオ(鳳月 杏)

さてこの先、果たして鳳月 杏主演の舞台を観る機会がどれだけあるのか、皆目見当がつかない。

彼女がトップになるのかならないのかもわからない。目下、歌劇団は特定の期が重要な番手に集中しているがゆえに、色々困った問題も目に見えつつあるような(私はこの特定の期集中は誰も得しないと思っている派)……。

そんな中で、上級生である鳳月 杏が一介の観客である私に与えているインパクトはとても大きい。
いっくら主演がよかろうがヒロインがよかろうが、鳳月 杏が舞台にいるのといないのとでは、面白さや舞台密度が違ってくる。それほど大きい存在に感じている。
そんな彼女の主演。ひょっとしたら最後かもしれない主演…そんなのもったいない…!
大変に心身を充たしてくれる観劇だった。ああ、何度でもいうがあのフィナーレの美しさよ。そこに至る緻密な舞台よ。

宙組の真風涼帆は立っているだけで凄い。どの期にもどの優れたトップでも、彼女のようなギラギラスター性があるわけではない。それと同じように、鳳月 杏も、存在が華やかな、稀有なタカラジェンヌであると思う。
一日も長く、この人のタカラヅカ舞台を観ていたい。





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月組KAAT公演『ELPIDIO(エルピディイオ)』を観た

ハッと気がつくと、5月のありちゃんブエノスアイレス以来の月組
ギャツビーのチケットが取れなかったのでなんか本当に本当に久しぶりの月組

そして……。
優しくていい男のちなつさん。貴方にとてもとてもお会いしたかった…!

悪役とズッコケ悪役といい男なんだけどオモシロ…とかじゃなく

月組に異動してきて三番手から二番手、舞台上の役割だけではなく上下左右から頼られ信頼され番手以上に八面六臂の活躍をみせつづけている鳳月 杏。
彼女がやるから場がもつ、彼女が歌い踊るから魅せられる、彼女が立っているから面白い…そんなまさに 、彼女がいるから客席が安心する偉大なスターちなつさん。
スカステで若手時代の別箱モノとかバウとか探しても時々ダルマとかタコ足になっていて、わかる。あの超絶脚長とその美脚を支えるバーン!とした完璧なお尻。
うっとりしちゃう。決して下世話なはなし(だけ)ではなく、彼女は舞台上で神経が行き届いているお行儀のよい人なので、見るたびに舞台映えするひとだと感じ入るの。

ポジション的にも担う役がどうしても偏る2番手にいるので、このところの記憶に残る役は主に敵役やちょっとひょうきんな頼もしいおっさん役やら。
それらももちろんいいんだけれども、やっぱりこういう、静かな情熱をみせるかっこいい役が、みたかった。

舞台上のいろんな人と役者と

まず、あ、私、月組ひっさしぶりだわ、としみじみ実感したのが、白雪 さち花(マグダレーナ、知的なキャリアウーマン)と千海 華蘭(マルコス、陽気な食堂主人)を観て。そうこれこれ…。久しぶりにみるさち花ちゃんはほっそり8等身、何だあの腰は!と相変わらずの美しさ。そしてからんちゃんはそこにそういうおじさんがいるようにしかみえなくって、ピガールのロートレックを思い出した。この人は演じているんじゃなくて化けているんじゃなかろうか。
それを後ろ姿で感じさせるんだから。なおからんちゃんは毎度フィナーレで童顔系ハンサムクール男役になってすごいカッコいいので大変危険人物である。

ざっと出演者で目に留まったのは、
蘭世 惠翔:すごくきれいに洗練されて目の引く娘役さんになっていた。こんなにかわいかったっけ、て思うくらい。今回特に、かわゆい。
きよら 羽龍:最初、別人か?と思ったけど間違えようもないあの声とキャッキャ感。きよらちゃんの役は決して比重が大きいものではないが歌いどころがあり目立ってた。
英 かおと:アレ?嘘でしょ…てくらい顔が小さくなってたような。私はうーちゃんがふと、ニコッと笑うのが好物なんだけれど、なんか9等身くらいのイケメンになってた。
蓮 つかさ:イケメン執事ぶりが2次元過ぎてれんこん君…?となった。隅々まで行き届いた完璧なお姿だったと思う。るね君とかやすちゃんとかれんこん君とか、月組は執事系がいっぱいいるよね。ウンいい組。
彩音 星凪:なんかでっかい目のキラっとしたのがいるなと思うとそれはかのん君。充実してるぅ。
大楠 てら:でかいのがいる!それはてら君!なんか益々お芝居うまくなってると思う。素人ながらに毎回、あ!て思うてら君。応援してる。
妃純 凛:強い踊り子。スゴイカッコよかったし、生命力の太さがよかった。

…この調子で全員分書きたくなるが、割愛。

話は…

このエルピディイオ、要約すると、つまりは、ハーレクインあるあるの男女逆転版といおうか。
何も持っていない&過去に訳アリの主人公が、なぜか貴族と瓜二つで、ひょんなことから替え玉に…。そして身分違いの恋に落ちてしまう。自分が成り代わっている本物の貴族は性格が悪くって、そのパートナーは、アレなんかいつものあの人と違う…と気が付くんだけど、顔が同じだけの中身違う人にまた惚れるんだから、どんだけその顔が好きなんだよ的な話(※ちょっと違う)。

鳳月 杏が成り代わることになるアルバレス侯爵の妻パトリシア(彩 みちる)はかねてより不実で性格の悪い夫に離婚を望んでいたが、久しぶりに会った夫(中身は入れ替わってる鳳月ロレンシオ)と会食をするにも、髪のひと房から足の先まできっちり装う貴族の女。
この、女は大変よ…みたいな身支度シーンの彩みちるは、咲妃みゆ風味があった。メイクだろうか。落ち着いてゆっくり目に話すせりふ回しも、声色がとても上品。
なんにせよ、みちるちゃんとってもこの役を嬉しそうに演じていたように思う(そりゃそうだろう)。

単にこの入れ替わりのロマンスに主軸を置かずに、当時のスペインのややこしい世情をちらつかせながらもう一人の主人公がでてくる。それが彩海 せら(セシリオ、レジスタンスに足を突っ込む青年)。彩海せらの役がよかったのは、キャラクタとして見てるこっちのストレスが溜まるような愚か者ではなくって、自ら考え行動するよい人物だったこと。だから彩海せらがすごくよくみえる役だった。歌がまたよくて、一幕後半のソロは劇場全体がぐっと引き込まれる音がしたような。私も見入った。

常に目がキラキラしてて、彩海せら君、雪組時代よりなんか5センチ以上背が伸びた?て思った。何となく小柄のイメージだったんだけどなんでだろう。
めっちゃスタイルがいいので舞台映えしまくってた。あと声がいい。芝居声のよさは永久輝せあもそうだけど、彼女もいい。すごくいい。歌も芝居も滑舌がよくまた同じ声色で芝居と歌ができるよね。今後も楽しみ。素晴らしい二番手ぶりで、まだまだ彼女の翼は大きく広がりそう。

まゆぽんと!

輝月ゆうま(ゴメス、侯爵家の忠実なる執事)はまたキーパーソンのひとりであり、物語上3番手くらいの大きなお役だった。まゆぽん。おじさん役がすっかり板について…と思ったけど元々うまいんだったわ。でも専科ってことは老け役増えるよね…いいようなチャラ男もたまにはやってほしいような…。
月組っ子だからなのか、まゆぽんだからなのか、アロンソ(侯爵家の使用人、ビジュアル系眼鏡黒服)のコンビも完璧で、愛嬌たっぷりで。ちなつさんとの絡みもなんかもうすごく楽しいし、ああまゆぽん…。専科にいってあちこち引っ張りだこじゃないか彼女。

他の人の観劇感想で、このちなつ侯爵ごっこと執事まゆぽんとれんこん使用人の3人のやり取りが愉快なコメディで…とあったが、決して内輪受けにならずやり過ぎず絶妙な加減だった。なので私はこの芝居全体の感想として、コメディ作品だとは思わなかった。笑いどころ多いけど、演出家作者の意図としては政治的な話、彩海せらが巻き込まれるテロ行為や、彩みちるパトリシアや、白雪さち花マグダレーナが傾倒している女性の社会的な立ち位置の問題やらとのグラデーションを意識していたのかなと。

記憶にのこるお芝居

グッと来たところはたくさんある。さりげなく繰り返し描かれる酒場の群衆芝居にこめられたもの。登場人物たちの大きな大きな貧富の差。
そして、身分を偽ることになった主人公の静かな情熱ほとばしる口づけシーン。理性的で優しいヒロインのあまりによくできた品のよさ、などなど。

ふいにはじまるフィナーレまで見どころの多い作品であった。ちなつさんに関する感想は切り分けることにする。

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