隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

成績とキラキラ問題~星組の不思議~

ガッコの試験の成績のとおり、舞台で輝けるかというと…の答えは悩ましい。

歌が下手な人のソロは聴きたくないし、醒める。
ダンスしてる風で両腕をあげてドヤってくるくる回るだけのデュエットダンスも、…アレ?と思う。
棒読みの芝居、滑舌の悪さなども、「なんでこっちが我慢しなくちゃいけないんだ」と我に返ることがある。

かの名作漫画に思いをはせる

ふと思い出すのは、漫画「ガラスの仮面」において、風水火土のエレメンツの試験をやっていた亜弓とマヤ。
マヤの天才ぶりに打ちのめされた亜弓に対し、月影先生は、水の試験のオマケで「表現力」がいかに重要かを示し亜弓の自信を取り戻す、という場面がありました。
これ以外にも「梅の木になってみせなさい」という突然の指示に、華やかなポーズをしてみせた亜弓と、地味なポーズのマヤで、持続のしやすいポーズで、なんかだんだん木に見えてきた!というオーディエンスのコマにその気にさせられ、マヤに軍配があがったものの、実際のところ客に伝わる表現方法は大事という月影先生

役になりきっていようが、芝居の天才だろうが、幼いころからバレエやダンスや日舞を訓練していないマヤの身体には、絶対に表現できないことが山ほどあることを明確にしたエピソードがいくつかあり、亜弓というキャラのポテンシャルの高さがあらためて確認される後半の流れ。まあ漫画じたいの結末はいつになるのやらだけれども、侮りがたし美内先生のこの部分の役者の対比。

そして何よりも、我々観客は、結局のところ演者の心などはこの目にみえないので、演者が最中に全然関係ないこと考えて踊っていたり歌っていたりしたとしても、その技術が優れているほうに拍手する生き物に違いない、と思っています。

歌舞伎でもあるある

当代勘九郎が、お父様の18代目勘三郎さんに、楽屋で厳しい指導を受けていた映像があって、そこで故勘三郎さんは、息子勘九郎の、「土下座状態の姿勢で、涙をこらえきれず泣きながら台詞をいう演技」のところでこうおっしゃった。
「心でいくら演技したってそれじゃ伝わらないんだよ。型ができてないんだよ」
「型ができてりゃ、心の中で今日の夜ご飯はハンバーグだって思ってたって客は泣くよ、ほんとはいけないんだけどさ」

一言一句正確じゃないけれど、ようはこういうことを伝えていた。役の気持ちになって勘九郎が泣いて見せたところで、
歌舞伎座の最後尾の席に座る客にわからない動きじゃ意味がないということを。

私はこれで、「表現力」というのは自分が思っていた以上に「具体的な技術力」が支えるのだという、実に基本的なことに気が付いた。
子供のころから舞台はいろいろ見てきたけれども、どこか「ゲージツカ」の「なんかすごいところ」は「めにみえないもの」だと思い込んでいたわけです。

表現力って言われると、「まごころ」みたいな、形のないスキルだと捉えがちだったのであるが、いや違う「表現力」とはたとえて言うならガラスの仮面姫川亜弓が幼少時から努力して鍛えて掴んできたバレエやダンスや声楽や日舞やらのお稽古によって得られた肉体的精神的な技術だと、今の私は理解しています。

もっともわかりやすい表現力

歌唱力は裏切らない。
このところの引きこもり生活でスカステをかつてないほど視聴するようになってなおさら、思うことである。

しかしもうひとつわかりやすい表現力がある。それが「キラキラ」
ヅカではキラキラってやたらいうけど一般的には「華」だろうか。舞台で妙にいい人って、やっぱりあるんだと思う。

キラキラ重視の星組、実は芝居がいい

星組は5組中、もっとも、入団成績よりもキラキラ重視、のようで。
抜擢具合が、他組ほど成績上位に偏っていないようですね。
現トップが久々の実力派 なんて言われようですが、実力度外視だったのは直近の紅時代が顕著であっただけだと思う。思いたい。そして紅トップはキラキラというかギラギラというか、うお、まぶし ていう華があり、それは礼トップコンビにちょっと足りないものでもある。実に面白いと思う。

そんな星組。演出渾身の「霧深きエルベのほとり」やふたを開けたら大好評の「Another World」など、実は器用に熱量もって
まとまりある舞台をみせてくれると思う。
星組って人気あったのわかる気がするんです。紅コンビの退団公演もまとまりと熱量は、花組の退団公演以上と思いました。
花組のはファンの熱のほうが熱くて引くほどであった)

紅時代の星組は、
王様と寵姫がお花畑だけど、大臣が先頭を切って頑張ってて、国もちょうど、戦もなく繁栄して民が満足しているしまあいいか
みたいな状態でしたよねぇ…
紅ゆずるが、不器用ながら猪突猛進にもがいて役に向かっている様子は、観ていて面白かった。
器用で何でもできる人よりも愛されたりして、損するんだよ、こういうのが横にいるとね。

一方でトップからしてまじめで器用で人気も申し分ないのに、実はスッカスカとまで厳しい意見を持つファンがいるのが雪組
芝居がそれほどよくない、という懸念が見え隠れしている。
雪組はトップコンビの歌だけが突出していい「だけ」。そして上位抜擢層に人気ジェンヌがいる「だけ」。
下が自立に乏しく実力が追い付いていない。
こんな意見があることを知ったとき、ずいぶんと辛らつだと思ったけれども、完全否定はできず、3番目以下中堅が人気先行で芝居がよくない。

芝居は、やっぱり月組は一番いい。外部カンパニーみたいだなと思った印象は各人が結構自立した役者だからではないかと思う。
しかしながら、星組のもつ芝居のエネルギーや、なんというか、団体戦としてのセンスは、5組中、1,2を争うのではないかと思う。
成績よりも大事なものがある、というのではなく、成績では測れない(測っていない)能力が確かにあって、劇団や人事に携わる人はそれを知っているのだろう。



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