隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

『◯◯の◯組』 の呪縛

プライドを持って語られるその言葉。
誇りをもってジェンヌたちが口にするその肩書。

80年代後半~90年序盤のヅカを知る身からすると、ちょっと窮屈になる。

「いま」を表現する形容のはずだった

私はいまもそう思っていることがある。
「ダンスの花組」は大浦みずきが歴代最高ダンサータイプのトップだったからこそ、当時の花組に冠された、大浦みずきトップ時代の花組を賞する表現だった。
2番手も安寿ミラで、ダンス表現は当時随一だった(おかげで真矢みき時代はたいそう苦労した)。
「和物の雪組」は杜けあきにその力があったから、そして二番手が一路真輝というこれまた和物で名作をやり遂げたトップが2代続いて、あの時代のトップのカラーを象徴した。
しかし杜けあき一路真輝も日本物だけがよかったわけではない。杜けあきの「ヴァレンチノ」のポスターを、スチールを観たことがあれば、そのあまりの麗しさに現代のファンも目を奪われるだろうし、一路真輝は伝説も多い人だがなんていったって唯一にして無二の初代トートである。

芝居の月組は、大浦みずき花組への「ダンスの花組」という称賛を込めた呼称がファンの間で一般化してから、当然のごとく劇団内にも浸透し、じゃあ私たちはなにかしら?という問いによって生まれたような、花組を向こうにして月組が名乗った(月組ファンが呼び出した)呼称であったと思う。
起源は諸説あるが、私が覚えているのは剣幸時代の月組(2番手涼風真世、その下には天海祐希があがってきていた)が、「○○月之丞一家(○○の部分は宝屋だったか)」と冗談めかして自分たちを旅芸人一座のように名乗っていたことがあった。剣幸はいまあちこちの小劇場に客演していたりして、彼女の芝居を間近で見られるが、小さな劇場には余るほど相変わらずうまい(コロナで幕があがらなくなってしまったが)。
星組はちょうどいい呼称がなかったので定着しなかった。当時のトップ紫苑ゆうも、その次の麻路さきも、いまおもえば稀有な、ノーブルな雰囲気をたたえた超個性派トップが続いていた。
その後宙組が誕生し、このような○○の○組はいったん廃れたが、ヅカファンは中身が入れ替わらない(婆になってもヅカファン)なので、その後20年経っても、誰も忘れてはいなかった。

伝統化縛りをするほどではない

20年も経てば伝統なのだろうか。過去の偉大な先輩をリスペクトするのはいいが、余計な縛りになっては「今のトップのカラー」を消してしまいはしないだろうか。
真っ先に思うのは、花組の柚香光はダンサータイプだが、空気が読める子ゆえに芝居の間がよく、コメディエンヌの素質充分。
ダンサーの面だけがクローズアップされがちなのはもったいないジェンヌで、特徴ある美貌と間の良い芝居とで、魅力や特色は一色ではない。
しかし彼女は「ダンスの花組」の呼び名復活にちょうど良いダンサーであり、水美舞斗もまた実力では随一なダンサーを添えて、ますますダンサー面を強調しようとする路線が見えている。
が、ダンスの表現力があるということは芝居っけがあるということでもあるわけで、そこを褒めないのはもったいないなあ、とも思うわけで。

最も美しいトップスターが生まれる

さて、月組の珠城りょうはちょっと珍しいほどの美貌である。が、ヅカファン好みのど真ん中ではない。ヅカファン好みのど真ん中はもっとチャラくてホストっぽいのが歴代一番人気で、つまり明日海りお系。わかりやすくチャラいのが好きなんである、ヅカファンのメスたちは。
さてしかし、明日海りおはビジュアル系であったが、パーフェクトな美貌ではなかった。柚香光も、目も鼻も大きすぎてちょっと特徴があり過ぎるので、美しいには違いないが、癖も強いの。すべてが完璧ではないからこそ、とにかく魅力的に映るタイプ。

しかしこの秋、パーフェクト美貌のトップスターが月組に誕生する。月城かなと。360度パーフェクトな美貌。彼女の顔立ちの癖のなさ、すべての形の良さは奇跡的なほど、漫画のようなお顔。
このすべてのパーツとそのバランスが真に完璧な月城かなとがいままで「地味」だったことが実に面白い。
月組にやってきて、縁の下の力持ち系、裏方にまわることがなんの苦でもない苦労人トップ珠城りょうのもと、月城かなとは殻を破ることに成功した。一人一人が、役者として一本立ちしていないとやっていけいないのが現月組。珠城りょうが月城かなとへ引き継ぐ月組は個性爆発しており、「○○の」とくくることが難しいほど豊かである。

ダンスの星組

現在もっともダンスに強いトップコンビは星組。どうみても「ダンスの星組」である。
そこに足りないものを補う2番手以下で、面白い魅力を放っている星組。今彼らがロミジュリで、タイミングはばっちりだった。
いまロミジュリをやらなければ星組は少々低迷していたかもしれないと思うほど、3拍子揃った若いトップ礼真琴時代の前半戦は、何拍子揃っていても何かが足りないという不思議な現象が起きていた。
しかしロミジュリによって、星組生たちの魅力個性が認知され、星組の魅力とロミジュリの魅力の親和性が爆発中。どこで使ったらいいか持て余し気味だった愛月ひかるはここにきて、星組になくてはならぬ味を発揮しているし、いやあめでたしめでたし。…

雪組は代替わりで個性発揮はまだこれからだし、宙組はマカゼの宙組というのがしっくりくるほどの顔っぷり。はたして2025年には計画通りアンバサダーたちが、トップもしくはトップ大手に手をかけているのだろうか。その時一体、どの組がどんなカラーを発揮しているのかはもうまったく予想がつかない。というか野暮か。



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