隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

「かげきしょうじょ!」と「かげきしょうじょ!!」と「ライジング!」

今年、アニメ化もされてすっかり認知度のあがった「かげきしょうじょ!!」
私はこの漫画の黎明期からのファンであった。ただ最近はまったく推していない。

先が長そうなので…

こりゃあ、コミックス40巻越えもあるであろう、と感じて、「かげきしょうじょ!!」の連載を追いかけるのはちょっとやめてしまった。面白いけどね!
そんなに長いマンガを購入したくない、何年も追いたくない、できれば20巻以内で何とかしてほしい というのが私のわがままである。これはすべてのマンガに対してこう思う。
しかしいま「かげきしょうじょ!!」が連載しているのは、人気作品をとにかく長くかかせるでおなじみの白泉社……。
入団か初舞台くらいまでで終わるのかな?て気もしなくもないけど、いろんなキャラのエピソードが豊富な感じのマンガなわりに、主軸となるストーリーは、あらかじめ見えている一本道。
卒業、入団。入団しても宝塚歌劇をおおいにモデルにしている分、ヒロインが1年目で大きな抜擢を受けるとか、オーディションで勝ち抜くとかそういうマンガにはならないわけで、
そうすると、研○としてやっていくコツコツとした日々のなかでの群像劇(登場人物一人一人にスポットをあてていき全体の物語が展開)をこのままやり続けるのかしら?
どこで終わるのか、が結構難しいマンガなのでは、と思う。

ちなみに、群像劇のことを「グランドホテル方式」ともいうんだよね。あのグラホのことです。おもしろい。

「かげきしょうじょ!」との出会い

知人の漫画家さんがジャンプ系で連載していたため、その編集さんとなんどかご一緒することがあった。その方が「ジャンプ改(かい)」という雑誌に関わる人だった。
モダンで楽しい雑誌で、私は結構好きで、珍しくもずっと購読していた。そのなかでも看板になるほど面白さをどんどん発揮していって、誰の目にも力が有り余っているマンガにみえたのがこの「かげきしょうじょ!」であったと思う。
この「ジャンプ改」という雑誌はあまり長続きせず休刊となってしまったが、そこで連載していたマンガの多くは、連載終了ではなく、連載を引き継ぐ受け皿となる雑誌へ引越ししていった。
編集部の良心かな。
そして「かげきしょうじょ!」は、集英社の革新的ジャンプ系雑誌から、少女漫画の花、白泉社へもらわれていった。
実際、当時連載を読んでいても雑誌がマイナー過ぎて話題にならないだけで、「これ白泉社あたりにいったらめっちゃ人気でそう」て自分でも思っていた。案の定であった。

ジャンプ改連載分が、「シーズンゼロ」としてコミックスになっている分。白泉社での連載から1巻~で続いている。
シーズンゼロ分は、ヒロインのひとり、元集団アイドル出身のクールな女の子のエピソード(あんまり明るくない話)がメインになっている。読んでも読まなくてもいいけれど、このシーズンゼロあっての白泉社版。

白泉社にお引越ししてタイトルが「かげきしょうじょ!!」となった。!がひとつ増えたの。
集英社にとっては無念であろうが作品にとっては、白泉社に引っ越したことでスムーズに人気がでた。

ライジング!」を知っているか

「かげきしょうじょ!」を初めて読んだときの私の印象は「なんだ宮苑か」であった。宮苑とは、マンガ「ライジング!」の舞台となる「宮苑歌劇団」のことで、宝塚歌劇をモデルにした漫画といえば、「ライジング!」がまず思い浮かぶ。
氷室冴子先生が原作、藤田和子先生が作画という。私の世代の女子であったものならみんな知ってるでしょなコンビで、もう20年以上前に読んだきりなのによく覚えている。
氷室冴子先生といえば有名なヅカファン。しかし「ライジング!」は宝塚歌劇をモデルにしつつも、おそらくあえて宝塚歌劇とは違う設定や仕組みをたくさん取り入れて現実の宝塚歌劇とは程よい距離を作ったうえで、創造したキャラクタたちを動かしたあたり、作者がファンだからこそあえてそうしたのかなと思う。

ライジング!」の主人公は、ダンスがしたいだけで、少女歌劇のことも「宮苑歌劇団」のことも何も知らずに受験して入ってきた、というタイプのキャラ。そのため色々型破りであり、この「型破り」がテーマにもなる。恩師となる人物が「宮苑歌劇団」の枠を破りたい、娘役トップスターを作りたいという野望を持っており、主人公はそこに向かっていくが、という内容。

特に印象的だったシーンとして、人気スターとなったものの、舞台人としてちょっと迷いが出始めていたころの主人公、舞台に登場したシーンで客席から拍手をもらい内心ホッとする。
しかし、友人であり舞台人としてライバルでもあった娘役が登場しているシーンの客席の反応を見て、自分とは違うことにハッとする。
自分への拍手は文字通り「自分への拍手」であって、あの娘役の子の舞台シーンでの客席の拍手や涙は、芝居に感動してのことだったという事実に気が付き、「宮苑のスターである自分が舞台に出ればなんであっても拍手が来る、客がくる」ということと「舞台人として役者として芝居そのものが評価される・芝居を見てもらえる」ということのギャップに悩む という場面。

もうひとつが、主人公が「宮苑歌劇団」を飛び出した後、外部舞台のオーディションに参加する。得意のタップダンスを披露するものの、結果は伴わない。自分が一番、オーディションで目立ち、内容もよかったはずなのに役がもらえないという現実に直面し、ショービジネスの厳しさを知る という場面。

なんというか、どちらも今思い返しても、普遍的なシーンなのでは?と感じてしまう。

確か、私がこの「ライジング!」を読んだ時点で「古いマンガ」だった。いつのものか調べてみると、連載時期が「1981年から1984年」とあるからかなりのもの。
大地真央がトップ時代に連載されていたマンガよ。

「かげきしょじょ!!」の進む先は

「かげきしょうじょ!!」は現在11巻まで出ているのかな。ここまでは購入しているけれども、アニメ化したものは、私は観るのをやめた。アニメで観るにはメイン主人公「渡辺さらさ」は、うざいだろうとおもったから笑。
「かげきしょうじょ!!」の物語はいまのところ、ほとんど音楽学校の生徒としてのキャラクタたちの物語で進んでいるが、授業とか音校生活そのものが深堀りされるってほどでもない。コミックスは大体、本編+番外編1本で構成されており、この番外編は脇役だったり、歌劇団を目指すとある少女を描いていたりと、まさに群像芝居。
メイン主人公はふたり。「渡辺さらさ」と「奈良田愛」。タイプの違う少女で、渡辺さらさはドラゴンボール孫悟空タイプ、奈良田愛はドラゴンボールでいうピッコロ、みたいな…。

「渡辺さらさ」のほうは出自は複雑なものの天衣無縫系で大きな才能と大きな欠陥があるな~ってタイプ。「奈良田愛」のほうは元集団アイドル出身でタレント性抜群だけど人間力に乏しいが、目覚めたらいけんじゃねってタイプ。どちらも学年の優等生というわけではない。とにかく優等生の成績一番の委員長系や、きっといい舞台人になったろうに家の商売が失敗して学校を去るものなど、様々な少女がでてくるし、とにかく青春って感じ。

すすめる?すすめない?

宝塚歌劇に対して真面目なファンには、マンガは勧めないかな。「ん~。今どきオスカル様になりたいっていわれても…」とモヤってしまう人もいると思う。
タカラヅカがモデル?タカラヅカ風味があるならおもしろそ~!と、なんでもオッケーなタイプの人ならきっと面白いのではと思う。
マンガとしては「ライジング!」のほうがはるかに大人っぽい(昔の少女漫画はなんでもかんでも、精神年齢高いよね)。「かげきしょじょ!!」はとっても洗練されて絵もきれいだしマンガとしてとても高品質。
タカラヅカがモデルとなれば、ちょいちょい出てくる演技力を見せる場面だけ描いても仕方がない。そもそも男役・娘役については全然まだ描かれてないので、主人公たちの男役・娘役が決まっていくところから、そういう男役づくり、娘役づくりのエピソードもみられるのかな?まだそういうのが全然なので、これからかな?
でも、とにかく主人公の生まれ育ちに起因する脇エピソードもてんこ盛りっぽいので、「タカラヅカをモデルにしたジェンヌなる少女たちのマンガ」感は、まだまだうっすい。

宝塚歌劇そのものをモデルにした漫画はもっと色々、ちょいちょい調べると出てくるけれども、実はマンガにしづらいものだと思う。
というのも、モデルとなるタカラヅカに敬意を払って、誤解を生まないよう設定を忠実にマンガに持ってこようとすると、マンガ的なドラマに乏しくなってしまうからだと思われる。

だって現実のタカラヅカでの、御曹司!とか抜擢!とか研1で新公ヒロインとか なんかもう充分ドラマチックなわけで。タカラヅカをモデルにするなら本当のところ「研20のトップスター」みたいな方がはるかにドラマチックであるが、世の中のドラマチックの基準が「新人が早期抜擢」「素人だったのに主演」とかそういうガラスの仮面的な展開を望むわけで。
その逆のほうがよっぽど感動的なものがあるタカラヅカを題材にして、特別な才能を持ったスターを描こうにも、取材すればするほど作者にとっては実に窮屈なことになるのではと思う。

「若い子が凄いのがすごい」信仰があることに、こんなところで気が付く。



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