隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

花組観劇~やっぱり花組は他組とちょっと違う~

久しぶりに東京宝塚劇場で観劇してきた。
ハイロー以来かな?なんて思ってたけどイヤイヤ…年末の雪組蒼穹以来だった。その前が11月の月組のKAAT公演。これ、何観たんだっけ?…としばらく考えてしまったが、こうして書きだしているうちにエルピディイオだったと思いだす。雪組についても、咲ちゃんの歌声が記憶から呼び起こされた。

スターたち>>>作品そのもの って感じに愛されてるタカラヅカ
私も、演者がジェンヌたちじゃなかったらハイローだって蒼穹だってエルピディイオだって観に行かなかったにせよ、過去作品をあっという間に忘れがち。消耗品のごとく観劇体験を消費しているきらいがある。SNSをみていると、贔屓の組の公演をほぼ毎日観劇しているような人がいるけれど、世の中には自分の想像を超えた生活をしてらっしゃる貴族のような人が確かにいるんだなぁと。彼らは観劇体験を消費しているのではなく食事のように観劇を日々摂取する。SNSはそういうことも知れて面白い。もんのすごい熱量だもの。
あのシーンの左から二番目のキラキラした子誰だったんだろう、なんてこともこういう劇場に日参できる貴族層のファンの方がすぐ教えてくれたりして、ほんとスゴイあと親切。

花組。どことなくほかの組よりねっとりしてて正直、腰が引けることもある花組。でも花組みると一番「タカラヅカみたな~~~」って気分が満ち満ちするよね、と今回改めて感じた。

うたかたの恋」はなんでみんな好きなんだろ

今回、ポスター観たときに大勝利だなあって思った。なんと美しいことか。二人とも顔の真正面をこっちにみせないというなかなか思い切った構図が実現できたのは「だってわかるでしょ、うたかたの恋だよ?」といわんばかりの自信にあふれていてすんばらしいとおもった。

私は、史実をうまいこと切り取ってフィクションにして、それがあんまりうまくて美しかったから史実もそうだったに違いないと勘違いをたくさん産んでしまった作品は罪深いなと思う方で。しかし一方で作品をきっかけに史実を調べて「違う…!」てのが大衆娯楽の醍醐味でもあるわけで。
ルドルフがマリーと一途に愛し合い、なんてことは微塵もなかったにもかかわらずなんと美しい物語に仕立て上げたものか。そしてタカラヅカの舞台に実によく似合う。

王侯貴族という、特別な地位をもって生まれたものは果たさねばならない責務がある。それを放棄して自由だ恋愛だなどというのは許さない、という私の価値観では、くそ坊ちゃんが現実と向き合いたくなくてやらかした自死(に巻き込まれた元カノのマリー)というしょうもない出来事なのだが、これを題材にした花組の舞台が、こんなにも美しくなんともはかなくて最後はほろろと泣かされる舞台に昇華されるとは。名作と名高いのもわかる。そして今回泣かされたのにはラストの影コの歌が抜群によくて。オープニングのテーマソングは「あ~はじまるな~」って感じなんだけれども、みせられた悲劇の最後にまた同じ歌をきかされて、その響きがなんとも切なく泣かされた。

終始、同情されているような主人公

今回のうたかたの恋では、柚香光演じる主人公、皇太子ルドルフはそのややこしい立ち位置、大変そうな人生を生きている立場にある者、として周囲の登場人物が一概に彼に対してどこか、憐れんでいるように見えた。
彼を特別憎んだり、政治的反目などから苦々しく思われていたり、といった、なんというか、直接ぶつかっていくような積極的な感情の対峙を誰も、柚香ルドルフには向けていなくて、みんな一歩引いている。

狂言回し兼、皇太子ルドルフの政治的立場について重要な揺さぶりをかける水美ジャン・サルヴァドルも、皇位継承に関して微妙な関係である永久輝フェルディナンド大公も、柚香ルドルフには一線ひいて優しいというか……、喧嘩したくないので遠慮する、みたいな気遣いというか……。

親もあんなだし、政略結婚相手はツンツンだしで、孤独な青年ルドルフにとってまっすぐにお慕いビームをぶつけていく16歳の星風マリーがひたすら眩しかったの、わかる。
作中、誰も柚香ルドルフとちゃんと視線を合わせてくれなかったのに、星風マリーだけが最初から最後までぶれずに「死んでもいいからお慕い」を貫いていたから、さぞかし柚香ルドルフにとっては救いであったろう そうみえた。だからこそ成り立つ、うたかたの恋物語となっていた。

メイクで誰、声で誰

スカステで初日映像をみたとき、星風まどかのメイクがいつもと違うなあなんて思ったけれども。外国人顔にしたてていたのかな?声は終始、乙女の甲高い声で。
この作品。マリーの演じ方が生々しいと一気に臭くなる。だって不倫だし、皇太子は無責任だし。
幼い無邪気さが前面でも恋の真剣さが出ないし。その点、星風マリーはお見事だった。徹頭徹尾、純粋を貫いていた。

実はオープニング。真っ赤な階段上で白いドレス姿で登場するあの姿をみていたら、「ああ、この役は(美園)さくらちゃんでもみたかったな…きっとよかったろうな…」と思った。勿論星風まどかがどうということではなく、星風まどかのオールマイティさと周囲に合わせる完璧さみたいなものが生み出す透明さからか、あのオープニングのデュエットシーン、もしさくらちゃんだったら?うみちゃんだったら?マカゼだったら…?みたいな妄想がたいへんはかどった。
そのうえで、柚香×星風でやりたかった陣営もわかるし、お似合いだったなぁとしみじみ。

はなしは単純で簡単。

難しいことはなにもなく、政治的なことともこのルドルフは一線引いており。ふたりの恋に集中した物語。最初からおわりまで一切集中が途切れることなくとてもスムーズな展開で、心から楽しめた。
印象に残ったシーンとして、2人の出会い。劇場でハムレットを観劇中、舞台の左右にしつらえられたボックス席でドラマが始まるわけだけれども、その間中央で繰り広げられているハムレットのバレエがとっても良かった!ハムレット役天城 れいん、オフィーリア役七彩 はづき。

写真だと独占欲にかられたこじらせ男子みたいなことになる柚香×星風コンビだが、舞台上の柚香ルドルフはそんなことなく、ひたすら愛しい人を胸に抱きしめたいという男として演じられていたように見えた。まあそんなだから皇太子としてはダメなんだけどさ。
正妃ステファニー(春妃 うらら)も大変美しくて。女好きなのにも関わらずどうして妻はいやなんでしょうねぇ、男性って…。

華雅 りりか嬢がイイ

皇太子ルドルフの人物像の見え方にも大いに影響がある、エリザベート役の華雅 りりか 。今回退団だけれども、素晴らしい花道というか。
貫禄があり母の愛があり、でもルドルフを愛情をもって手元で育てたわけじゃないから、そういう複雑なものも抱えている感じもすごく伝わってきた。
オペラグラスで観てたけれども、眉がね。眉がすんばらしかった。ああいうメイクも役づくりなんでしょうね。さすがだった。

最初から最後まで飽きることなくだれることもなく、本当によい舞台だった。



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