セクハラパワハラ報道で突然異動・退社となった某元演出家が4月に歌劇団を提訴したという報道をみた。
詳細は毎度おなじみ例の○春。
当然ながらの食い違い
ざっと内容をみて地味にひっかかったのは、被害者とされたA氏の「母親」が出てきていること。A氏って成人しているのにお母さんがあれこれみてるの?
本人が心身を壊したら、いくつであろうが両親がケアするのが当たり前なんだろうか。そんなもの?
たぶん今の日本ではたとえ子供が20代だろうが40代だろうが親が出てきて我が子をかばいまもり、会社に申し立てまでしたりは普通に受け止められるのだろうなあ。私には少々過保護に映るけれども、そうした意見すら被害者を攻撃する意見に見なされてしまう世の中なんだろうか。
親が窓口になっていることの危険性は、この手の問題は当人すら相手の言動意図を解釈違いするところからはじまるものなので、当時者以外が介入したら事態がどんどんすれ違い悪化するんじゃないかということ。介入する第三者や代理人は弁護士に限っておいた方がいいんだろうと思う。難しいことだけれど。
どちらの味方もできないけれど
○春はまずハラスメント行為である某演出家が追放された、その理由となった行為はこんなものだったらしい、と報道。それが昨年末。
で、いま、同じ媒体である○春がその「元」演出家の訴えと主張を掲載。どっちも○春が煽ってるんじゃないのかい、と思うが、それが商売だものね。釈然としないけれど。
新生雪組の公演がはじまって、追い風中というこのタイミングも意地が悪い。
で、とてもよくないなあと思うのは歌劇団(阪急)の対応…。
ご存知歌劇団は、たびたび演出助手などのスタッフ採用をかけている。A氏はその正門をたたかずに(叩いてたのかもしれないが公にされていない)、知り合いの知り合いに強いOGがいるぞというコネを使って、問題の元演出家の力によって歌劇団に採用された。以降、A氏はこの元演出家への恩をかえすべく媚びまくり腰巾着になったわけだ。そのことは証拠が記事に掲載されていた。
その元演出家は採用権限を持っていたから、彼が恩を売りたくなるような目上の人気OGから紹介された人物を歌劇団側に採用させることができた。
…にしても、最終的な決定権を持っているのは採用した歌劇団。だからこそ責任をもって歌劇団が一人のスタッフを適切に扱わねばならなかったのではないかと思う。
どこかの私設劇団じゃあるまいし、大企業傘下の歌劇団が、なんでこの新人A氏と元演出家が公私の別なくコミュニケーション取るような関係性になるまで放っておいたのか。誰が採用に口をだそうが、給料を支払っている会社側がコントロールすべきごくごく基本的な企業コンプライアンスは、なかったの?と思ってしまう。
今回の件に関して公表されたA氏と元演出家とのやり取り、なぜそんなやり取りができてしまったのか?というそもそもの理由は、そこに会社の枠を超えた、古(いにしえ)の徒弟制度が演出家界隈に存在するからではないかしら。
芸能関係はなんでもありじゃないぞ
子どものころから、昭和のスター=破天荒がヨシ とか、歌舞伎役者=女遊びは芸の肥やし とかいうのが不思議だった。
不良がカッコイイ てのとたぶん思考ルーツは同じなんじゃなかろうかとも思う。
有名演出家なら灰皿投げても武勇伝になったりとか、大物女優なら大遅刻していいとか。そういうのも、理解しがたかった。理解できないのは私が庶民でありその業界の人間じゃないから、ていうこともたぶん大いにあると思うが。
この歳になると、指導者が生徒や弟子の立場のものに、厳しい言動を投げることで、泣かせるような厳しい対応をすることで、何かを引き出そうとかその体験でこそ最短ルートで学べるものがあるとか、そういうものは、確かにあるんだろうとは、思う。誰かの体験として見聞きするなら「つらい目に遭ったおかげで成長した」話は美談になる。ただし「成長した」「大成した」話だけしか語られない。そうはならなかった話は今回のスキャンダルのように…たくさん腐って地の底に滲みているんではないかと思う。
ただ興味深いことに多くのフィクションが「死ぬほどのひどい目に遭うことで特別な力に目覚める」という描写をしており、これを読者は歓迎する。勿論、フィクションだから。不倫を唾棄するだろう多くの人がタカラヅカの舞台上の物語でおこる不倫ものに寛容なのは、フィクションだから。舞台演出家は美化がうまいものだ。
歌劇団は運営もスミレコード
だがしかし、会社組織はそれをしてはならないと思う。社員のなかの権力を、それも人事に関する権力を与えている社員が、若い新人と密になることを、たとえそれを新人が希望したとしても、絶対に許してはならない。会社の人間関係と学校の人間関係はそこが違う。
なにかしらの権限がある社員を作ったのなら、その社員がつねに公平でいられるよう管理しないといけないと思うのは、私だけだろうか。
このスキャンダルの登場人物、誰にも同情できない。ただ、それが起こった歌劇団は会社組織としていかなる個の独善や暴走が可能な状態を決して許してはならない。
めっちゃくちゃ難しいのはわかるけど…。
自分の所属する会社を振り返ってみても、謎の行動で勝手な仕事をやらかしている社員はいるし、それを放置している上長もいるし、それを訴えても処分できない人事もいるし、それもこれもすべては人と組織にとって、いちばん安全な温さを保つためであったりしてなかなかに悩ましい問題がある。
でもねぇ、株主がいるような会社は、それをよくあることなんていって見逃し続けることはあまり清く正しく美しいこととはいえない。