隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

OGによって語られる細かすぎて伝わらない歌劇団情報

花組OGの天真みちる氏があらたにはじめている連載

「おじさん芸」を磨いた元タカラジェンヌ 天真みちるの雑草魂 に興味深いことがいろいろと書かれていた。
woman.nikkei.com

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ヅカファンからみて、専科ではなかったたそさんが、セカンドキャリアで世間向けに呼称するようになった「おじさん芸を磨いた」の部分について、はじめてみたときにはちょっと違和感を感じていたけれども、この方の文章を読んでみればすぐに誤解とわかった。
既刊本に書いてあるものからも伝わってくるが、ヅカの中の人・タカラジェンヌであったたそさんにとって専科とは宝塚歌劇スペシャリスト集団であって、私のように「重要な老け役をやる人」なんていうとらえ方をしてないのよ。私の専科への認識がいささかざっくりと雑すぎる。専科がそれだけじゃないのを観てきているはずなのにね。反省。

初めて知る内部事情

ひとつの組にだいたい75人くらいが所属していて、組のことはプロデューサーが全権担って運営していて。そこまでは既知の情報だった。
しかし、
・下級生はプロデューサーとの面談は2年に1回
・上級生は年1回

で、下級生はプロデューサーや演出家の先生などに、おいそれと機会を見つけて話しかけようなんて行為はとてもじゃないができない・やったらアウトな空気であるらしいことがビシバシに伝わってくる。

下級生の扱いがいささかかわいそうじゃない?と思う。下級生へのフォローのほうが手厚くあるべきと思うのは、私が一般企業の感覚でとらえているからだろうか。
足りないフォローは上級生や組長がするの?そんなの、よっぽど面倒見がよくて本人に他人のケアができる余裕があってストレス耐性が鬼強いタイプのジェンヌがたまたま上級生にいないと、なかなかねぇ。
美園さくらちゃんがメンタルケアのシステム拡充の必要について言及していたことを思い出したよ。

己に向き合いすぎるしんどさ

ちょうど同じタイミングで、87期の元雪組娘役の晴華みどりさんと元月組の綾月せりさんのインタビュー記事を読んだ。
卒業を決めた心境についてはいままでいろいろなジェンヌさんのものを見たり聞いたりしてきたけれどこの、お二人の会話からなるインタビューで語られたそれぞれの卒業を決めた時のお話は非常に興味深かった。こんな風にリアリティある内容を語ってくれるものをみられるなんて、なんて貴重!

hint-pot.jp


そして卒業までの道筋にある、抜擢に対するプレッシャーのこと。
自分は質問を投げられるほどまだまだ向き合ってないんじゃないか、意見が聞けるほどのレベルに達してないんじゃないか』という心境……なんと己に厳しいことか。
自分と向き合い続けた結果、至らなさに目が留まってしまい上級生にそうそう相談できなかった、そして今思えばもっと相談してよかったのに、と当時を振り返って語られている様子は、読んでいるだけでこちらの姿勢も正してしまうような厳しさ。

たそさんも

天真みちる氏もやはり、抜擢に関しては「抜擢されなかったこと」について連載のなかで非常に貴重なお話をされている。
ファンレターでファンの方が自分を見てくれている声にじかに触れる分、役付きが自分の思ったようなものではないと、かえって『なぜ…』とネガティブな考えにとらわれてしまうことがある、という点に触れられていたこともまた、当事者でしかわかりえない感覚。

そこまで追い詰めないといけないのか、とかそこまで己と向き合い続けるものなのか、とただただ圧倒されるばかり。

また下級生時代のたそさんが別箱の割り振りに漏れた件についても紹介されている。

いつの公演だったか…。月組の3分割のときだったか、だれがどこに振り分けられたのかを確認していて、4~5人、どこにも名前がなかったジェンヌさんたちがいた。その中には毎公演、いい役をもらっている上級生の名前もあったので「心身メンテナンスの休みをもらったのかな」と思ったけれども、一緒に名前のなかったほかの子たちはみな、研3くらいの下級生だったので、休み??ケガがあったとか??くらいに感じていた。

しかし、かつてのたそさんのようにもしかしたらその下級生の何人かは演出家から要らぬとはじかれた子だったのかもしれない。
経験が大事というのに、下級生時代に、本人への予告なしにある日突然「自分の名前がどこにもない!」ということがあるのか。その心境は計り知れない。

むかーしむかしの映像で

私にとってのミーマイ、ジャッキーといえば麻乃佳世だし、グランドホテルのフラムシェンは麻乃佳世である。

どの時点での密着取材番組であったかは覚えていないけれども、天海祐希の相手役としての何かの稽古場で、麻乃佳世が演出家と怖い顔で話し合い、まったくもって納得していない難しい顔で会話は終了…その間天海祐希は近くにいるもそこに入らず、という映像で、ナレーションとか画面の見せ方としては、若き新トップを支える経験者トップ娘役である麻乃佳世がそのことで何かの苦労をしており演出家と意見交換している みたいな見せ方で。
いまのトップスターとかいまの天海祐希の価値観からいうと信じられないかもしれないが、別に特別扱いされてなかったように受け取れるもので強く印象に残っている。あんな風に演出家と会話ができたのも、主演だったからなのだろう。

その麻乃佳世はたしかグランドホテルの役作りの一環で、お衣装がすごく短いミニスカなものだから、体づくりをしなければと夕飯を18時までにしてそれ以降は食べ物口にしないようにしてお稽古して体づくりをしたら30キロ台に落ち込んだ、と笑いながら暴露していた。これも現役当時の映像で。
いまよりおおらかだったよなあ…あの手の映像も。笑いごとではない絞りっぷりなのにそれを明るく披露されていたものね。

抜擢される子と覚えてもらうことから、の子

演出家にまず存在を気付いてもらうところからのスタートだったたそさんの話には、入団前から名前が売れている話題の・期待の新人の名前も出てくる。
そもそもが選ばれしジェンヌたちも、入団時点でまたスタートラインが大きく違うということが浮かび上がってきて本当に競争社会なんだなあと。
一方で綾月せりさん晴華みどりさんのインタビュー記事には、こちらは抜擢ゆえの苦労の話が対比が面白いし、また、副組長の話も。

組長、副組長は寮住まいって初めて知った。へぇ…。
寮がどんなところなのかはわからないけれども、なかなかのプライベート滅亡ルールである。

最近のこの手のインタビューはちらほらと、話の中にこうした「へぇ~」という知らなかった情報がちりばめられていて、おもしろい。
どちらかというと話のメインよりも、面談が年1回以下なんだ~とか、卒業すると決めるときのあれこれってそんな感じなんだ~とか、副組長さんてそんな感じなんだ~とか、そういうことがとにかく面白い。

たそさんの連載も、綾月せりさん晴華みどりさんのインタビューも、まだ続きはこれから公開なので、引き続きとてもとてもたのしみ。




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