隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

海乃美月と有沙瞳

もうまもなく、月組次期トップコンビが発表されるのではないか、というファンのそわそわおちつかない状態のなかで、SNS上でみかける「海乃美月が報われてほしい論」。
いや、あんな6人目のトップ娘役みたいなポジションの人いませんけど、これ以上何を報われろと?正妻の立場ですかね?といった風情の海乃美月。
抜擢され過ぎてて、進むも退くもいばらの道のように思える。

別箱専用トップ娘役状態

月組の別箱公演=ヒロインは海乃 というのがどの程度のものなのかあんまりぴんとこず、そうだっけ?くらいに思っていた私。
この場合、ほかの組と比較しても意味がない。
タカラヅカの組というのは、同じ学校の別のクラスという感覚では大間違いで、実際は別の劇団への移籍くらいにずいぶんと事情が変わるというのは、歴代ジェンヌさんたちの証言のとおり。
それだけ違うよその組の、娘2や若手抜擢層と比べたところで、あんまり参考にならないのでは、と思う。
ただ、ファンからはやっぱりそうは見えない。同じタカラヅカだからね。

で、海乃さんどれくらいヒロインやってるのかしら、とWikipediaで確認してみたところ…


海乃美月
2011年、宝塚歌劇団に97期生として入団
 →2012年龍真咲・愛希れいかトップコンビ就任
2012年、組まわりを経て月組に配属
2013年1 - 3月、『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』 - 小公女/幼少時代のアンドレ、新人公演:ロザリー(本役:愛希れいか)※正ヒロインではないが本役はトップ娘役
2014年3 - 6月、『明日への指針-センチュリー号の航海日誌-』新人公演初ヒロイン
2014年7 - 8月、『THE KINGDOM』早乙女わかばダブルキャストで東上Wヒロイン
2015年9月、『A-EN(エイエン) ARI VERSION』(バウホール)バウWSヒロイン
 →2017年珠城りょう・愛希れいかトップコンビ就任
2017年1 - 3月、『グランドホテル』新人公演ヒロイン
2017年4 - 5月、『瑠璃色の刻(とき)』(シアタードラマシティ・TBS赤坂ACTシアター)東上ヒロイン
2018年6 - 7月、『THE LAST PARTY〜S. Fitzgerald’s last day〜フィッツジェラルド最後の一日』(日本青年館・シアタードラマシティ)2度目の東上公演単独ヒロイン
2019年1月、『Anna Karenina(アンナ・カレーニナ)』(バウホール)バウヒロイン
2020年2月、『出島小宇宙戦争』(シアタードラマシティ・東京建物 Brillia HALL)東上ヒロイン
2021年2 - 3月、『ダル・レークの恋』(TBS赤坂ACTシアター・シアタードラマシティ)4度目となる東上公演単独ヒロイン

入団以来、ほぼ毎年どこかでヒロインやっているじゃないか。
彼女がヒロインを務めなかった2016年の月組は、激情で全国ツアー(珠城・愛希プレお披露目)をし、東上でアーサー王伝説(珠城・愛希・プレお披露目2)と新体制の準備年。
つまり海乃美月は入団以来、ヒロインができる機会は全部モノにしてきた、ということであろう。見事な独占っぷり。

海乃美月の強さ

うみちゃんの入団当初は、早乙女わかばちゃんと並び比べられていた。その早乙女わかばちゃんは、早期抜擢を受け4度新公ヒロインを務め、2018年退団。個々のジェンヌさんにはさして興味のなかったかつての私でも、名前を憶えていた、印象深い素敵な娘役さんだった。

たとえば最近でのわかりやすい例、舞空瞳のように、よしきたちょうどいいのがちょうどいいときにきた!とばかりに一気にトップ娘役に育てるような子とは違って、うみちゃんは、ちょうどよく○○の相手役に!という娘役ではなかったかもしれないが(そんなのはタイミング次第なので稀だろう)、舞台人として高い期待を寄せられ、ずっとそれにこたえてきた人だというのはわかる。それがこのヒロイン独占状態なのだから。

先日のダル・レークの恋も、観客の期待に応えらえる女優として、月組の中で誰かといえば、あの役はやっぱり海乃美月でよかったのだと思う。

でもね。

でも…、なのよね。
少し前にスカステで、宝塚歌劇における海外ミュージカルの歴史というような特番があって、これが鳳月杏と海乃美月という2人での進行・出演だった。
まるでトップコンビのようだった。
このときに、ちょっとモヤっとした。うみちゃんはIAFAでちなつさんとは夫婦役。同じ年に別箱の出島小宇宙戦争で相手役を組んでおり、『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』の月の場面でも、3組の男役と娘役がコンビで踊るときに、ちなつさんと組んでいる。
ちなつさんは言わずと知れた人気上級生であり、組みなれた二人の並びはまるでどこかの組のトップのようで、ひどく戸惑った。

これはこちらの受け取り方の問題なので、ご本人たちには何ら関係のないことだが、「もう、キミはいいから新しい若手娘役がみたいよ」という気持ちに拍車をかけたのである。 ※全くの個人の気持ちの問題です。

ただし。ただ一方で海乃美月が選ばれやすい娘役であることは感じる。
ダル・レークの恋をみながら思ったことだが、オーディションをやってヒロインを選ぼうとしたところで、たぶん並べて比べると、海乃美月はほかの子よりも総合的によく見えるんだろうということがすごくよくわかるの。

月組の安牌(あんぱい)、彼女が今いるポジションの別名。

星組有沙瞳はというと

実力系娘2という名の、トップ娘役に抜擢されそうでされない、でもヒロインをやり慣れている(経験積んでいる)娘役として、私の中でうみちゃんとイメージがかぶるのが、星組有沙瞳
ところが今回あらためて、こちらもWikipediaで確認してみると。

有沙瞳
2012年、宝塚歌劇団に98期生として入団
2013年、組まわりを経て雪組に配属
2014年6 - 8月、『一夢庵風流記 前田慶次』『My Dream TAKARAZUKA』 新人公演初ヒロイン
2015年11月、『銀二貫-梅が枝の花かんざし-』(バウホール)バウ初ヒロイン
2016年、星組へ組替え
2017年3 - 6月、『THE SCARLET PIMPERNEL(スカーレット ピンパーネル)』新人公演ヒロイン
2017年7 - 8月、『阿弖流為-ATERUI-』(シアタードラマシティ・日本青年館)東上初ヒロイン
2018年2月、『ドクトル・ジバゴ』(シアタードラマシティ・TBS赤坂ACTシアター)専科理事の轟悠の相手役を務め、東上公演ヒロイン。
2019年11 - 12月、『龍の宮(たつのみや)物語』(バウホール)バウヒロイン
→2020年、礼真琴、舞空瞳トップコンビ就任

うみちゃんのいっこ下さんというやつでしょうかね。1期下で、こちらも入団以来、ヒロイン経験豊富。だが1年違いなだけなのに海乃のヒロイン経験数が多いのがよくわかる比較対象となった。

演技力があり、歌がうまく、滑舌もよい彼女は、海乃美月以上にオールマイティ度合いの高い、総合力の高い娘役だと思う。
一方で、龍の宮物語でみせた女優魂は「タカラヅカのトップ娘役」にはもったいないような気も。どうしたって滅私奉公の舞台技術が優先されますからね。
公演中のロミジュリでは、乳母役を任されていて好評。だけれども私が感じたことは、うまいけどこの子はまだ、乳母じゃないな…、です。
東京公演ではもっとよくなっているでしょうけれど。顔がかわいすぎたよね。

持ち味の重い娘役なので、月城かなとの隣に立ったら相当すごいトップコンビになりそうなんだけどな。どちらも古風で正統派な美貌で、濃ゆい芝居でやりあってくれそう。

「報われ」とは

首席を走り続け、たぶん誰よりもそこを目指していただろう仙名彩世タイプは、トップ娘役というポジションはまさに「報われ」たのだろう。
が、そもそも、総勢400名、各組80名弱の劇団において、1度でもヒロイン経験積んだ娘役はそもそも、チャンスを与えられ努力が報われた役者であると私は思う。
コネも実力も足りず、稽古場での態度や努力の度合いも、下から数えた方が早いレベルの子は実際たくさんいるだろう。「本人なりにがんばっているが……」というやつ。
普通の学校の普通の40人学級でも、妙に前に出て目立つ子というのはひとりふたりいる。やる気や舞台への欲を昇華できる子っていうのはきっと、稽古場でも目立つのではないだろうか。海乃美月と有沙瞳というのはきっと、目に留まる役者なのだ。

充分に実力を発揮している彼女らをさして、いったい何が「報われてほしい」のだろうか。卒業後の第二の芸能活動のためにトップの称号がもらえなかったら「報われない」のか。そもそも卒業後の進路などのためにタカラジェンヌになる子は、まあゼロじゃないだろうが、10年残るジェンヌのなかには少ないだろう。

ところで

美園さくらは99期生、この3人は海乃を最上級生として、みんな1期違いなんですね。
彼女はIAFAのヒロインに一番はまる人ということで、トップ娘役の路線がひらけたのだと私は思っているのだけれど、「持っている人」だというのは確かに感じる。下級生ながら美園さくらの持ち味の大人っぽさというか、ゴージャスな華、トップ娘役らしさは実に見事。

さて次期トップ娘役たち、
花=星風
月=次期未発表
雪=朝月
星=舞空
宙=潤
てことで、宝塚歌劇の印象もまた変わっていく時期です。
このなかで、やっぱり並べてみると上級生娘役として朝月希和の娘役力って本当に高くて抜きんでていると思う。舞空瞳の能力の高さをして「舞空プロ」なんて呼び名が一時期で回ったけれどいえいえ、本当にプロ娘役と呼ぶにふさわしいのは朝月プロでしょう。
マスカレードホテルで魅せた、ひたすら瀬戸かずやがよりよくみえる娘役っぷりが本当に強く印象に残っています。
比べてみると、海乃美月と有沙瞳ってのは、朝月希和ほど枯れていないというか、より個性や癖があるなと感じ、組む相手との相性の良しあしを産む。
その点、朝月希和って「誰かと組んで踊ったりお芝居する」ていうことについてはオールマイティで、そこがいま、彼女がトップ娘役にと望まれるに至ったポイントだったのかなと。

結局のところ

誰が月組の次期トップコンビとして発表されようとも、だれであってもタカラジェンヌには間違いないの。
その点がタカラヅカのいいところよね。これが大作アニメや映画だったら、ヒロインに新人アイドルや大手プロダクションの推しげーのーじんがきちゃったりするからね。
確実に、未来の上演予定に合わせて選ばれたタカラジェンヌが、選ばれるのだから、我々ファンは安心していい。


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