隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

やっぱり美が正義!最高美更新 デスホリという悪夢②

最後の場面の月城かなとを拝めたんだから、デスホリは大勝利なんです。

というか全員大勝利

この舞台全編通してかなりの量を歌い倒すのに、よくぞ出演者のみなさまは、体調復活して(させて)幕が開けられたなと思う。
休演のまのあ澪ちゃんは辛いと思うけれど、未来のためにゆっくりしっかり養生して欲しい。
観劇した舞台、すべての出演者の熱は凄くて、舞台の近さからいつも以上に存在が生々しくて、それがとっても嬉しかった。

主要な役は皆、ソロを歌う

タカラヅカの舞台づくりではありえないことだから、とても新鮮だった。みんなこんなに力を持っているのに、本公演では脇に徹しているわけで…、ちょっともったいないなとか切ない気持ちにもなった。別箱公演は本公演では難しい活躍ができることが多くて、やっぱり大事な機会なんだなとあらためて思った。
そして舞台について…、それぞれが自分の歌を歌うものだから、話の主筋がボヤけた。主人公とヒロインの物語が霞んだな?なんて思ったり。

この舞台作った人は男と女、2人だけの物語にしたくなかったのだろうなという意思を感じた。
死神という、ありえぬ存在が真ん中に出てくる物語だけれども、冒頭から第一次世界大戦に触れている。この辺を掘りたかったのかなあ。元の舞台は結構古い。

死神か疲弊するほどの死を人間の営みは生み出しておいて、それを悲劇と嘆くおかしさ、みたいなものを死神は語る。人間たちのソロパートでは各々、愛や哀しみを歌い、その心に触れて動揺もする。死神がそうして人の心を知り人になる話か?というと、……。「どっちつかず」という表現がしっくりくる。
とはいえ、みんな歌いまくるので「これはそういうものだ」と割り切ると、脚本より役者目的の観客が圧倒的に多いタカラヅカには向いている作品といえる。

風間柚乃と白雪さち花の夫婦は息子を戦争で亡くしていて、埋まらない喪失感を歌うさち花ちゃんには泣かされた。
が、この設定によってこの二人はコメディ担当になりきれない。

片思い相手に恋の歌を歌うデイジーきよらちゃんと、そんな思いに気が付かないコラード蓮つかさのすれ違いの場面もたっぷりみられるが、昨日婚約破棄騒ぎをおこしたとはいえ、グラツィアとコラードは幼馴染関係からの婚約なわけで一朝一夕の間柄でもない。そこにガチ告白いれてくるきよらちゃんの女としてのしたたかさはどうよと思うし、なんかグラツィアと全然向き合わずに一人でウジウジしているコラードもなんだこいつと思うし、死神でなくとも「この人たちって、どうなの」と思わなくもない。

でみんな歌う。老婆演じた彩みちるもその相手役となった英真なおきもめっちゃ歌うし。あ、彩みちるちゃんは立派に老婆だった。この人は雪組時代のシティハンターの冴子役も、本来の持ち味(かわいい系)と系統が違うのに実にセクシーに、まるで身長が伸びたかのようにやってたし、ほんと表現力があるひとだなって思う。

私がぶちあがった場面は

白河りり演じるアリスは夫(風間・白雪夫妻の長男)を戦争で亡くした若い未亡人役だけれど派手な雰囲気で「アメリカっぽさ」を出していた。
このりりちゃんと、月城かなとのデュエットダンスシーン含めた2人の場面が、本当に良かった。
れいこちゃんが新たな娘役とガッツリ組んで芝居して歌って踊る姿を、ずっとずっとみたかった。

海ちゃんに不満はないが、れいこちゃんが別の人と組むことではじめてみせる魅力をみてみたいなあと思っていたのよ。
他組のトップスターを例に挙げるまでもなく、トップコンビは相手役が変わると新たな魅力を見せてくれるもの。
れいこうみは大好きだけれども、それとこれとは別の悩ましい問題…れいこちゃんの持つ全部の魅力が見たいから、他の人と組んで生まれるものがみたかった。

あくまで一場面のことではあったけれども、タップダンスもキスシーンも、ドキドキする椅子のシーンなんかも全部、ワクワクした。恋しそうにないロシア皇子(に扮した死神)の月城かなとと派手なアメリカ人未亡人(で見た目以上にナイーブ)の白河りりの組み合わせは、予想外っちゃー予想外の一時的カップルとして急接近して急に離れる。
脚本的には、死神とヒロインをくっつけたいなら、死神が恋を知る相手、ファーストキスの相手も、グラツィアでよかったんじゃ?って思わなくもないが、おかげで「トップスターの」れいこちゃんがあらたな娘役とこれでもかと絡む場面が生まれたのだから、不満はない。

あとりりちゃん、検索して気が付いたけれど、2011年のデスホリオリジナルキャストのアリスにめちゃ寄せてて雰囲気が同じ感じで、あらためていい役者さんだなと。本当にこれからも楽しみ。個人的に彼女の顔や姿、声も本当に素敵で好き。

あっちもこっちも

しょっぱな、スタイルの良さと口跡のよさを発揮した蓮つかさ。海ちゃんの婚約者役できよらちゃんに惚れられているうらやましい男。れんこんちゃんはいつもいい役をもらうよね。で、上手い。
やすちゃんも執事役者と名乗るべきハマり役だし。
芸達者と評判の風間柚乃がこれっぽっちも弛まずにスクスク成長しているのはこうした、うまい上級生にもまれているからってのもあるだろうな。

あと傍にいた一星惠、瑠皇りあは顔・立ち姿がいい(声もイイ)。 ついつい目を奪われた。メイドの桃歌雪ちゃんもうまいし!
それになにより、るねちゃん。鬼スタイルでパイロットのつなぎ着て出てきたけど目の毒過ぎた。

全員の名前を挙げたいけれど全員本当に素晴らしかった。歌もそれ以外も。

かえすがえすも、グラツィア考

開幕から楽しそうに歌うだけ歌って事故。奇跡的に無傷で助かってからは、家族や婚約者がなんかおかしいと戸惑うくらい、グラツィア海ちゃんの目はキマッており、それは終幕まで変わらない。

もしも、開幕のグラツィア海ちゃんが、婚約者への愛を語り家族と仲良くおしゃべりする芝居があったなら、事故後の様子の違和感を客席も共有できたのに、それがないからイマイチ、グラツィアがどう変わったのかが分からなかった。

ただ、海ちゃんグラツィアは、その開幕からほぼ、誰とも目を合わせてない感じだった。
そして洞窟の場面で、死神月城かなとの求めに応じて、目をみつめて、見つめ合って、それで恋に落ちてしまった。
なお月城かなとが別荘に滞在したのは二日間であり、このフォーリンラブは1日目の出来事であるから、展開の速さと比例する事態の深刻さはロミジュリ級。

一番不気味だったのは、るねちゃん演じるエリックが「サーキはパリで死んでいる」という情報を持ってきたあと。騙されていると思ったアリスりりちゃんとデイジーきよらちゃんが、グラツィア海ちゃんの部屋に駆け込んで「ウソだったのよ、騙されてるのよ」と訴えたシーン。

グラツィア海ちゃんは笑って「この思いは本物よ、恋をすればわかるわ、愛よ」とかなんとか歌い出して、最終的になんかいい歌を3人娘が奏でてウフフって仲良ししていたが違う、そうじゃない。

ロマンス詐欺かもよ、っていってんのになんか話の焦点がずらされてウフフってなってて、イヤイヤ…と思ったね。
一昨日まで別の人と婚約してた自称大人21歳のグラツィアさんだが、ここでもやっぱり何かがキマッており、死神以外とは話が通じないのである。

予言のような劇評をみつける

出演していたタカラジェンヌは全員、隅からすみまで、よかったし、この舞台をやってくれてありがとうと感謝したくなるほど、各ジェンヌさんの持つ魅力やパワーがみられていい機会だった。一方で、この舞台作品そのものは、最後のシーンの月城かなとが美しすぎて全部チャラなんだけれども、それを抜くと、どういったものかな…と。

と思って、そうだ、オフブロードウェイで上演されていた時の評判ってどうだったの?と検索したら素晴らしい記事を発見した。

ameblo.jp


トシさんはその筋じゃ有名な方。この方が描かれている表現が全部、ひざを打つほどの、そうそうそのとおおおりなんですぅぅぅ!という的確過ぎてぐうの音も出ない劇評。
おまけに締めの一文がまた鋭すぎる。これ2012年の記事なのに。予言書か!

さすがです。


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