振り返ってみると、若手を早期抜擢することよりも人気や人望があり、なにより本人の心身の丈夫さがその経験によって育っている上級生が主演をとることは、舞台内外を安定させることにつながるのではと、改めてそう思う。
代替わりが必須である宝塚歌劇。おまけに近年ますます、長期トップは本人のキャリア的にも回避されつつあるとみられるわけで、であれば野心ある若手だって、力と人気をたくわえるのには、順当に上がることが重要なのだなと。
おめでとう宙組
新生宙組、おめでとうございます。宙組カラーに包まれて華やかで。この5日間、スカステ無料放送があったのでひっさしぶりに各番組を視聴しましたが、ほっこりした。
年末はまた再契約予定。
さくさくの新鮮さはとてもいい。彼女の持ち味は前任潤花になんかちょっと被って見えるすらりとした美しさがスタイリッシュ宙組らしく、これからたくさんの花が咲くであろう期待感で楽しみいっぱい。
あと、長期二番手だったキキちゃんのことだから、トップ就任も穏やかな感じなのかなって思ったけど思いのほか大喜びではしゃいでいる。嬉しそうでなによりだよキキちゃん！
立場上、たくさんのしんどさ、「羽根の重さ」の言葉にこめられたものを背負うのは、２番手時代とは別物の力が必要になると思うけれど、彼女のトップスターの日々が無事にご本人の思い描いたような最後の日になる、そのときまでよいものとなるよう見守りたい。
そして私がひときわ目を奪われたのが桜木みなと。
２番手ってやっぱりいいよね
そういえばまだ２番手ではなかったんだな…と、そんな印象のベテラン桜木みなと。キキちゃんとの並びやプルミエールでのやり取りを観ても、なんというかキキちゃんに非常に気を配って素晴らしいサポート下級生ぶり。
キキちゃんって明るいって言われるけどたぶんセンシティブな、相当な繊細さというか心が震える小鳥みたいな部分あるんじゃねーかなーって勝手に感じている部分があり…そんなところをナイスカバーしてそうなずんちゃんっていう図式が初日までの映像でみえて、なんていうか。ずんちゃんがそれができる人と信頼できるのは彼女もまたここまで長く、エライ上級生さんたちのすぐ下でずっとやってきているわけで、いまさらぶれないでしょうよ。
きっと宙組の舞台の安定のカギはずんちゃんなのかな。これからの活躍ますます楽しみだし、コロナ禍でこれまた割を食ったずんちゃんの主演別箱も、そのうちあるだろうから楽しみ。
任せられるってこと
色々自分が観た限りの舞台を振り返ってみても、月城かなとをトップに置くには、相手役は海乃美月しかなかった。海ちゃんは常に素晴らしかった。そして二番手にちなつさんがいなかったら、舞台の面白みは半減していたろう（私にとって）。これからの月組がどうなるか、新生月組の顔はまだみえないけれども、うん、ちなつさんがいいな。そこにいてくれると。
どんどんとそういう思いが高まっている（自分のなかで。勝手なことだが）。
好みの歌声や芝居と、好きなスターはちょっとちがう
だいもんの歌は生観劇の動機になったけれども、トップスターのだいもんは私の好むタカラヅカのトップスターかというとそれはそれで、ちょっと違った。舞台でみせるものに瑕疵がない月城かなとだが不思議と、「推せる」ということもなく私にとっては普通で、珠城りょうの方が舞台を満たし面白かったと感じたし、笑顔ひとつでいえばマイティのそれのほうがキャー男役さん素敵ぃと思わせてくれるし…のように、大体、観る自分側の好み嗜好で誰をどう感じるかなんて、ねぇ。
そして何を思ったところで、客席にウィンクばちこーんもらったら全部吹っ飛んでハートとんじゃうしね。
経験が生かす
今の職場で１０年以上働いていてチームのメンバーもほぼ変わっておらず、人間関係も良好で日々キャッキャやんやとやっており、ストレスも大したものではない自分が最も気を遣うのが年上50代の妻子ある男子に仕事を教えること…ではなく、20代の若手に仕事を教えるとき。とにかく若手がこちらの言動をどう受け止めるか、自ら考え行動するその動きをどうフォローするか、やる気をけっしてくじけさせてはならぬと、それはもう、正直やりたくない仕事トップ３くらいに、神経をつかう。
タレント業だからって年齢や経験より才能などということはなく、心身の安定をはかる能力ひとつとっても、年齢をかさねて、繊細過ぎる部分がにぶくなり、経験によって動じなくなり…そういう熟成が力になる。
プルミエールで、宙組先々代組長の美郷真也さん、先代組長の寿つかさ、先代月組組長の光月るうの3者対談が本当に興味深く。
まりえさん（美郷真也）の「呼ばれたときに（副組長かな…）と思ったらあけてびっくり組長に、という話で泣いて『そんな大役できませ～～ん！！』と」
なんと千秋楽の大荷物かかえて劇団の人に見送られながら、その打診（というか辞令）だったと。（何も千秋楽の舞台後に呼ばんでも…）
その次に寿つかさが呼ばれて、副組長の打診が告げられたと。このまりえさんとすっしぃさんは、情報共有も電話で都度、どころではなく常にお互いの家にいたレベルで密に相談しあって物事をきめていたという。
一方光月るうは、新公学年卒業後の、毎年の面談の機会にちょいちょい、管理職（組長・副組長）みたいなの興味ある？という話があって、役者としての自分をみられていないみたいでショックだったとのこと。
るうさんが副組長、組長に上がる時代は、「組替えの（上級生）スターがたくさんいらっしゃったので生え抜き月組生の自分があえて指名されたのかも…」とかなり気を遣った言い方をされていたが、路線スター同様、あるいはそれ以上に「組長」「副組長」というまとめ役にふさわしいジェンヌは、早くから目を付けられて選ばれているんだろうかと思われた。
向き不向き、あるものね。それがトップスターというポジションであっても、本人の技量やスター性は素晴らしくてもトップスターには不向きな性格や気性や芸風や、みたいなのはあるんだろうなと。
かといって組長指名同様に、トップスター路線の抜擢も「むいてないから」と人に簡単にゆずれるものではない。そんな大変な役割の女性と組む相手役について、研10～の娘役と組める男役は、それだけで本当に楽させてもらっていると思うよ。心から。
