隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

寒の戻りの日に月組ロマ劇を観る

桜の花がほころぶ頃、必ず荒天の日がやってくる。満開が近づくと嵐がくるし、桜の季節の関東地方はいつも荒れがち。

そんな雪交じりの雨が降る、桜1分咲きの日にようやく月組ロマ劇を生観劇できた。
過去の公演ではなくて、お正月のフィナーレ生配信、ムラ千秋楽、東京新人公演と約3回にわたって事前に配信で観ていた公演というのもはじめてか。

生観劇して、健司がなんとなくわかった

礼華はるが新人公演で見せてくれた健司が、私としては「健司とはこっちだな」と思ったものだけれども、この日の月城かなとの健司をみて、それはようやく立体的に具体的に感じるものがあった。
新人公演の主演2人はこの演目にぴったりで、本公演の二人には出しようのない魅力があったものだが、決定的に足りないものがあった。それが役の掘り下げ、背景である。
新人公演は限られた中でつくるから、そのストレートな「そのままに演じる」取り組みはたぶん正解。
一方で、本公演は、役の背景、「どんな人物像か」が厚みをもってみえる。単純な公演回数・お稽古数の違いということでもあるのかな。
そして私はこの日、月城かなとが深めた健司を演じるのには、もしかしたら月城自身よりも礼華はるが似合うのかもな、なんてことを思った。
新人公演の役作りは、本公演の模倣と、オリジナルと、両方を兼ねているものと思う。

今回のように、オリジナル映画の存在がまず「作品の正解の絵」としてあって、それをもとに舞台版は、本公演主演2人にあてたわけだから本公演がタカラヅカ舞台版の「大正解」なわけだ。ベルばらやエリザやロミジュリのように、○○版として繰り返し上演されるための脚本ではない。
だから、新人公演が本公演を踏襲するのは、作品を描くうえで大正解と思う。そのうえで、月城かなとが作り上げた健司像を体現するのには、ぱる君の方が似合うようにみえた。それほどに月城かなとの健司はやっぱりちょっと、私にはヤンデレ風というかいい意味でたちの悪い男に見えすぎるというか……

そもそもロマ劇は主人公の男「健司」にとって都合の良い夢がかなうというおとぎ話としてつくられているので、健司は何もない普通の男でなくてはならない。
男子向け漫画にある、普通でヘタレな僕のところにある日突然美少女が!(しかも勝気な)パターンだ。
そのうえで「触れられない」という呪いまである。

理想のお姫様が永遠の存在であった件

これ(触ったら消える)は男女にとってどうでもよい問題ではない。しかし美雪は「おとぎ話映画のお姫様」というのが効いてくる。美雪を演じている女優とは別の存在なんだよね。
このお姫様の精神性は何十年、健司と生きていようが不変なのだ。美雪が「ずっと若いまま」というのは外見だけのことではあるまい。存在が「不変」ということ。
貨幣の使い方や洗濯の干し方や料理の仕方を覚えたとしても、美雪の心身は成長しない。フィルムに焼き付かれた存在だから。
だからそんな存在と添い遂げる健司は、諦念感が必要。それはぱる君の健司にはちゃんと感じられた。月城かなとの健司は、美雪と一緒にいることにもっとふかーい情念がありそうに見えて仕方ない。私の目に映る月城健司はとことん「こじらせ男子」なんだなあ……Why……

演出が美しい

映画との融合、モノクロとカラーの展開など、改めて劇場で体験して、とっても感動した。とても美しくて、これはもう演出家の大勝利ではなかろうか。
舞台で見る価値がしっかりと存在していた。
映像で観ていた時は気が付かなかったのだけれども、最後の最後、健司が映画の世界に融合する(というのか?)大団円にて、美雪のドレスは月色カラーだなあなんて思っていたら、みんなカラーになっていた。大蛇丸だってモノトーンじゃなくて色がね、ちゃんと変わっていて。下手にいた虎衛門の毛が黄色になっていたのでやっと気が付いた。

こまけぇことはいいんだよハイ幸せ幸せ!!ていうエンディングだよね。。

うーぱるがイイ

ショー、『FULL SWING!』の方。映像で観たのとは色々な場面で印象が変わった。やはりショーは劇場で楽しむに限る。
序盤の総踊りのところでなんだかタイのナイトクラブに行った時のことを思い出し…、
「ああ、ここはナイトクラブ・ムーンシャトー……ここの目玉ショー、FULL SWING! を観ながらシャンパンを飲む みたいな…この店通うわ!」
という妄想がはかどった。
しかしこんな雰囲気はすぐにどこかへいって、場面ごとに異なるストーリーが次々とあらわれていく。
月組は元気のよい若手の顔と名前がある程度わかるので、ショーも芝居も、皆細かい役の設定を築き上げ細かい芝居をたくさんしているのが伝わってきて面白い。
ショーでもそれは同様だが、より役名ではなく芸名で観客を魅せるショーのほうが、ジェンヌさんたちの面白さをかみしめられる。

そんな中でも、英 かおとと礼華 はるの両名がどこにいるか、ついチェックしてしまう。この二人はなんかコンビで観てしまうが、実際のところどちらも女の子としてとってもかわいい顔をしているのにとってもリアル男子感というか、まさに今若い世代に人気の韓流スター風味が(顔立ちということでなく持っている雰囲気というか)があって、これが新世代か感があってよい。
この、どこを見渡してもかなり貴重な等身大リアル男子感を持つうーぱるという存在は、現月組のとっても美味しいところではないかと思う。

つい目がいく、そこに蘭 尚樹

ピガールあたりからちょっとずっと気になっているまおまおこと蘭 尚樹。ショーでも様々な場面で活躍しており、相変わらず舞台に真摯な姿勢が美しいと思う。
決して上背があったり、男っぽい体格であったりというわけではないが、ますます黒燕尾やスーツの着こなしのラインがきれいで、女役とカップルで踊る数々のシーンは、
お芝居でもショーでも、とっても男らしくてちょっと感動した。

おや、いま後方に出てきた目を引く人は誰だろう?とオペラグラスを向けると暁 千星であったり、夢奈 瑠音であったり、蓮 つかさであったり。期待を裏切らない上級生たちである。
また相変わらず、光月 るうも白雪 さち花も今が楽しくて仕方ない!という表情や雰囲気作りが非常にうまく、これぞプロであるなあ、常に新鮮であることがすごい、と毎回観るたびに思う。

寄り添う海乃美月

海ちゃんはまさに満開花盛りのトップ娘役であった。赤と黒のドレスを着せたら一番じゃなかろうか。
例の、マフィアっぽい三角関係的な、雪組だったら死人が出るシーン(言いかた…!)での彼女が一番美しかったと思う。

海乃美月といえば、前トップとの間でみせてくれたドリチェでのミロンガの場面での素晴らしいダンスが印象強く残っている。
れいこちゃんには悪いが珠城りょうとのダンスのほうが海ちゃんはより抑えずに動いていたように思う。海ちゃんは相手に合わせるのがとてもうまい。

お披露目作品

今思い返してみても、博多座ドリチェはやっぱり、私には全肯定できないものであった。ドリチェはそこまで演じ手を選ぶ退団仕様であったとは、いまも、思っていない。
先日初回放送のあった雪組シルクロードと比べても普遍的標準的構成であったと思う。それでもあの感じ…だったので、今回の、2人のために作られたお披露目ショーをあらためてじっくり観劇してみたかったのだが、結果としてやっぱり、全然違うものだなあと、実感。

FULL SWING! は確かに、月城かなとのためのショーであった。彼女は各場面において、「芝居がかっていた」。
これが演出家がお披露目公演のショーでよりよくみせようとした、彼女の魅力なのだ。ストーリーや背景を感じる、キャラクタ性のある…そういう芝居がかった演出の連続。月城かなとはどの場面でも「誰か」であった。

この新しいトップスターが「月城かなとでございます!」「さあこのトップスター月城かなとを愛でるがよい!」ていうたぐいのオーラをガンガンにショーで発してくれる日はもう少し先のようだ。ご本人、苦手そうだけれどもスターには絶対にこれが必要。
これが大変上手だったのが紅ゆずるであり明日海りおであったわけで、なかなかマネできるものでもないが、技術と経験で魅せるものでもあると思う。そこに本人のスター性が乗っかれば天下無双だろうなぁ。未来への期待感が増す。

例のシーンは楽しめた

タカラヅカのショーでレギュラーメニューである、ラテン場面となんか戦争そして平和みたいな場面。今回のショーはジャズオマージュなのでラテンはお休みだったけれども、戦争的なやーつは暁 千星によって演じられた。
配信視聴のときは、ああいつものアレ風の場面ね~、ありちゃんまたまわってる~、あまし何しにでてきたww  ……くらいの凡庸な感想しかもてなかったけれども、
あらやだ、生観劇が違うのか、東京千秋楽も目前の時期ですっかり舞台が深まっているせいか、すっごくよかった。
この手のシーンはどれであっても何であっても誰がやっていても「例の場面か」と感じるばかりの私でも、今回ちょっと毛色の違う物語だな、というだけではなく、
輪をつくり踊るひとりひとりのエネルギーも、真ん中でそのエネルギーと視線を束ねる暁 千星も、オンナ大蛇丸がいたらこんなんじゃねっていう天紫 珠李も、一挙手一投足に意味を持たせることに成功していたと思う。

二番手三番手…

ここから暁 千星が抜けてしまうなんて信じられない!という残念な思いでいっぱいだが、彼女は栄転なので目いっぱいのエールをもって送り出すべきな…のは…わかってるんだけど、彼女が抜けたら、風間柚乃がそのまんまあがるのかね?上がりそうな大活躍っぷりだったけれども。特にショーは番手扱い明確だったのでここに、ほかの人気スターが組内であがってくることはなさそう。

月城かなとー鳳月 杏ー風間 柚乃ー???
いま風間が立っているポジションに誰がたつんだろうねぇ…というか風間 柚乃がそこにいることにようやくこちらも慣れたばかり。それがもう上がっていく。アンバサダー就任の例のイベントは2025年。
その頃までの変化を客席で見守るのは、心がとっても忙しくなりそうなことだ。











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