隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

花組 対照的な2公演と共通する美

永久輝 せあ『冬霞の巴里』ライブ配信の土曜日と、柚香 光&星風 まどか『TOP HAT』の日曜日。どちらも自宅でぬくぬくしながら配信観劇をした。

どちらも楽しかったけれど、ぬるっと家で集中力を欠いた状態では飲み込めなかった冬霞と、1幕途中からすでに「他愛のない話だなぁ…」としみじみ感じるトプハの対照的なことといったら。
重めと軽めの、ふり幅の大きな2つの演目、どちらもよい舞台であった。

存在全肯定の微笑み

それなりの年数、タカラヅカを観てきていても、相手役に対してこんなに包容力の高い微笑みを向けるトップスターっていたかしら、と思うの。柚香 光を観るたびに。
彼女の素晴らしいところは、「相手役が誰であっても変わらない、どんな状況であっても大丈夫」そんな微笑みを向ける点。それは、誰でも関係ねぇ、というオレサマ的テンションではなく、そのシーン・その作品それぞれで組む相手に対する信頼をみせ、精神的にも肉体的にも、トップを担う自分に全体重かけていいんだよというメッセージを向けているかのような、そういう美しさが花咲いている。
彼女の真ん中に立つ姿勢はいつも、その信頼の瞬間の連続のように見える。『不思議なほど「優しい微笑みをヒロインに向ける」という演出のもと、微笑んでいる』ようには見えない。どっちであっても正直、観客は正確に違いを見分けられないかもしれないけれど、とにかく柚香 光の場合は常に自然なアクション・リアクションとしての微笑みであったり手を差し伸べるしぐさであったり、乙女心をくすぐる夢のような存在としてたたずんでいるのだ。まさにタカラヅカのプリンス。

彼女が2番手までの様子は、「ダンサー+ビジュアル最強キャラ という割に、芝居がうまい人だな、むしろ芝居の人なんじゃないかな。特にコメディ」と思っていた。
今は全部がよくみえる。美しいのは顔なのではない。すべてが美しくてスマートで、うっとりさせられる。
そんな包容力抜群のとろけるようなイケメンぶりは、1930年代の他愛のないハリウッドラブコメミュージカルで描かれるヒーローに最適。

「ナイスワーク…」と同じカテゴリの作品ではあるなあと思ったけれども、柚香 光に似合う作品を、そしてれいまどコンビに似合う作品を、他愛のない明るいコメディを、という主旨はファンから望まれたものであると思うし、似合う作品なのだからよりみんなよくみえるということで、ただただ柚香 光がひたすらカッコイイのを堪能できたし、同じくらい星風まどかの美しさ腰の細さに目を奪われ続けたし、いや、いいよねこういう舞台。

ポスターとのギャップ

そして驚いたのが冬霞。永久輝 せあの、あの美麗ポスターとライブ配信の舞台姿とのギャップですよ。

ギャップがない。

え、美しく質感整えられたあのポスターのまんまの美しい人がいるやん? て似非関西弁が出るほど、ひとこちゃんの美しいことといったら!知ってた!

推されているらしい罪深き姉、アンブルを演じる星空美咲はお芝居上手だし歌はうまい、でも場面によってはごつくみえた。
偶然、アンブル役のカツラは、別チーム「TOP HAT」組の星風まどかのカツラとよく似た、赤めの金髪くせ毛ボブであったが、二日連続で似たような髪型のヒロインを配信で観てしまったので差を余計に感じた。結果、星風まどかは舞台人ヒロイン向きのスタイルでより見映えがいいんだなと思ってしまった。
空美咲もスタイルがいいけれど、女性として恵まれた系統なのかもしれない。だから装飾的な衣装にあのヘアスタイルは逆に、画面には豊満に映り過ぎたのかも。

永久輝 せあと、将来の相手役としてお似合いとは思わなかったけれども、歌もお芝居もよい主演コンビであったので、この作品によく似合うと思った。
1幕か2幕の前半かな?二人のデュエットは特に聴きほれた。

そして、やはり永久輝 せあも、どの角度、どのシーンを切り取っても美しくて見映えがして、どこか懐かしいようなクラシカルな美貌にもみえて、初めて彼女を見つけたときの感動が何度でもよみがえってくるような、そんなスターだなあとあらためてしみじみ感じ入った。

永久輝 せあの魅力ってあの、声優でも需要あるんじゃっていう美しい青年声。今回の苦悩する青年であり永遠の弟みたいなのにまたよく似合って、弟萌えとか一切ない身でも永久輝せあに「僕のねえさん」って言わせたのは素晴らしい演出と思いました。

きれいだったな

正直、冬霞の巴里…は…、第一幕は、外国の作品を観ている感じで、わかるけどわからない感じ。よその文化圏のはなしだから正直理解はしきれない みたいな感じが続いた。あんまり話が入ってこなかった、ともいう。でもあのグロテスクな演出はぞくぞくしたしひとこちゃんキレイにうっとりしたし、「えっと結局お父さんはなんだったんだっけ」くらいにぶっちゃけ話がはいってこなかった。
にもかかわらず面白かったな!ていう印象。自宅でくつろぎ過ぎながらの視聴だったので、全然集中していなかったとはいえ、こんなにえーっとなんだっけとなったのはもったいない。でも面白かったはず…。いつかスカステ放送が来たらちゃんと観る。

前日の冬霞をぼけっと観てしまい、話が入ってこなかったけどなんか楽しかった! というしょうもない感想になった反省を踏まえて、日曜のトプハはもっとちゃんと観ようとした結果、しょうもない話だけどカレー君がきれいすぎるからいい気がする。あとまどかの腰が細くて、それが2次元的で美しくて気が散った という感想となった。これまたしょうもないが正直に書くとこうなる。

ポイントはどちらもそれぞれの世界観で本当に隅から隅まで美しかったことかなぁ。
あと、タップダンスはもういいんじゃないかな~柚香光。ずいぶんやらされている気がする。娘役をリフトできる体幹持っている子がくるくるさせられまくるのと一緒で、いいんだけど全然いいんだけどそればっかりってのもねぇ。

ニンに合う

「この人のニンに合わない・合う」みたいな言い方をする批評はよく歌舞伎批評できく(というかほかであまりみない)表現で、ニンは「仁」。芸の骨格とか役者の性質とか芸風に合う合わないってことなんだと思うけれども、やっぱり軽~い作品でも、マンガ・アニメ的な今どきの重~い作品でも、主演をやる役者に合っていることが面白さに影響すると感じた。花組の2公演はどちらも、とてもよく似合っていたので満足した(響かなかったのはこちらの集中力の問題だと断言できる)。

「挑戦」の二文字でニンに合わない演目や役を振られてしまいがち星組(と感じている)…は、やっぱり損だよなと。
礼&舞空という最強かと思われたコンビも、たぶん想定より人気が爆発していない(あくまで想定より)理由はひとつじゃないが、このスターで観たい作品という期待を微妙にはずしてはずしてきているわけで、少々かわいそう。ロミジュリが彼らの使命だったかもしれないが、彼らの運命的作品はもうないのだろうか(まさかめぐりあいでははあるまい…)。

今回の舞台を観て思ったけれども、たとえば音くり寿はウマいが、やっぱりいつも舞台上ではちょっとやり過ぎなんである。
もうこの人は第二の清水ミチコみたいな独自のアーティストになれるんでなかろうか。武道館を満員にするような(清水ミチコはそれを何度も成功させているのだからスゴイ)。
聖乃あすかは、普段の坊ちゃん風から嬉々として狂気なパリジャンを演じ、尖りながらもよく調和していた。
紫門ゆりやは美しかった。あの声のトーンとずいぶんと抑えた棒読み感、感情をのせない芝居がうまい。
帆純まひろのべディーニは、よくやっているとこちらからお迎えに行く必要が少々、あった。
他、メイドやホテルスタッフ、ゴシックホラー的なあの手、など、名前とお顔が一致しないジェンヌたちの力演は、2作品とも、堪能できた。



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