隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

「元」は活用し尽くしていい

「元宝塚」の活用について、いちいち、ファンが物言いしたくなる気持ちは大いに理解できる。私もその一人だから。とはいえそれは身勝手な感情だと自覚してなくてはならぬ、と思っている。

珍妙な現象かごく普通のファン心理か

昔から、あきらかな性消費目的ジャンルでの「元」の使用に対して、歌劇団は厳しく阻止してきた。
でもさらに大昔の、ストリップじゃないもののそれに近い演出というか舞台でかなり布の少ない姿で踊る世界に移っていった「元」については認めるというか応援していた事例もある。

その線引きは何となく理解できるものの、実に都合の良い線引きとも思える。
なんであれ、どんな長さであれ、キャリアを積んだ女が生きて働いていくのに、己のそれまでの経歴を活用することに、外野はどこまで意見していいのだろうか。
SNSで拡散されやすい現代において。

トップだろうが厳しいものは厳しい

卒業後に本人の望みに近い形で仕事をしていくことは、たとえ元トップスターでも難しいことは誰もが知っている。SNSのあるいまは特に、それを肌感で感じる。
そして、仕事の取捨選択ができるくらいに売れるには、やっぱり、テレビ芸能界に強い事務所に所属する必要があるらしいことも、明らか。
テレビ芸能界で世間に顔と名前が売れてこそ、大きな舞台に立つことができる。

唯一、阪急のグループである東宝というでっかいところが帝国劇場を運営しているからこそ、OGのなかで選ばれしものたちが、帝国劇場に、東宝エリザに、スッと選ばれている。
かの花總まりが2006年に退団後、一度表舞台から足を洗ったものの女優として本格復帰したのが2010年らしいが、このブランクを屁でもないように「いい仕事」を次々とこなしていったのはまさに彼女が選ばれしものだったからこそで、なんで選ばれる人かっていうと、そのキャリア…彼女の「元宝塚」カードが最強クラスの「元宝塚」だったからこそ。
まあお花様は超特別って感じだけどそもそも、退団のいきさつ、退団からのキャリア、女優復帰の流れで、その特別扱いはぶった切れてもよかったのに、今なお女帝感があるのが「あたりまえ」に思えるのもちょっとすごい。そしていまの舞台姿を見てもやっぱり特別で当たり前に思えるのもスゴイ。
しかしこんな例は特例であって、毎年生まれる40名あまりの卒業生のうちエンタメ界で引き続き仕事がしたい子たちにとってはあまり参考にならないんじゃないかと思う。あこがれはしても。

だからこそ、トップ娘役経験者以外で研7までの間に退団した若い子が、若さゆえに選ばれやすいテレビ芸能界に強い事務所に入ることができて、グラビアやバラエティに出ることができて、そこで多少アク強め(=いい子上品な子以外のキャラ)を出していく「元宝塚」がいたら、それは、そういう子こそ、売れていかねばならない子ではなかろうかと思う。そういう子が売れることができたら後に続く子が出てきやすいだろうし、タカラヅカに進むことがより大きな未来への足掛かりになる方が、才能ある子が集まりやすかろう、と思う。

もう花嫁修業なんてないんだもの…

10代の美しく才能ある子を集めたいという究極の選民団体でそれゆえに特別な魅力ある歌劇団が、これまでそして今日からも、若い彼女たちの愛と尊敬をただ一心にタカラヅカのみに捧げよ、というのはいささか、いくらなんでも、酷だと思う。大学進学したら専攻学部を活かした就職しかしてはならぬくらいの、結構な厳しさよ。
タカラヅカは10年くらいしかいられないんだから、在団経験を足掛かりに月9で主演を張る女優になりたい、CM女王になりたい、グラビアクイーンになりたい、アイドルになりたい…いいことよ。

ファンが元ジェンヌのセカンドキャリアを応援したいという割に、若くして辞めた子をどこか根性なしのように一段低くみて、そういう子が今どきのSNS活用などでタカラヅカをネタにすれば苦言を呈す てのをみかけると、

「選ばれし者しか入団できない世界なんだから平身低頭でありがたいと思い、できるだけ長く務めあげ青春と若さと人生をすべて舞台とファンに捧げよ。推定30歳ぐらいのお年頃前後で順々と辞めることは問題ないがひたすら遠慮して辞めよ、辞めた後もつつましく感謝せよ」

…ファンの反応をまとめると、こういうことなのかなと。キッツイ。

卒業後、同じ阪急の息がかかった東宝をメインに出演する女優は、元トップたちでひしめいている。なら、元トップ以外の「元」の活躍の場はもっともっと広がらねば。
「元ヅカがもっと活躍できれば」といい「元ヅカの肩書を乱用するな」という「狭さ」では、ますますタカラヅカは斜陽になるんでは、と思う。

若手活躍の成功例があればあるほど、後に続く「元」たちの裾野は広がる。
そうした例は、ライブネクストとやらの団体ではできないことだと思うから(なぜってコネのある大手テレビ芸能事務所じゃないから)、またあらたに発表となる卒業生たちがもし、セカンドキャリアをエンタメ界で…と思うなら、それがなんであれ先例があるほうが救いになる、と私は思う。

うまくやるには

ただし。
若い卒業生が多少無理してでもフォロワーを集める行為をするときには、やっぱり「スミレコード的なものは大事にしておいて損はない」と思う。

なぜって、物事は敵を作らず円満に進めておく方が、後々、自分にかえってくるものに影響が大きいから。辞めた後文句ばっかいう子は短い間面白がられて、一瞬で消費されてしまうだけだし。
うまくやり、自分のコネやカードを増やし生き続けねば。毎年新たな才能がたくさん卒業するのだから。



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