前評判も高く、話題性も高く、おまけに幕が開いたら公演そのものの評判もよしという、好調な公演となった星組RRR、そしてショー「VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)」の大劇場千秋楽を、配信で観た。
ファーストインプレッション
ちらほらと前評判やほかの人の観劇感想を観ていたが、実際に観てみると、実によい舞台版RRRだった。
「あの長いインド映画を?」といわれていたけれども、RRR映画をちゃんと見た人間はわかると思うがあれってまあぎゅっとできるもんね。むしろ1時間半でちょうどいい…。
思いのほか映画版に忠実であったな、という点と、きわみ君の役は映画じゃイヤなちょい役だったのがいいやつに膨らませてもらってよかったねと。映画をほうふつさせるような美声だらけで、実に素晴らしかった。
ショーにかんしては、指田先生が何でそんな評判よかったんだったか私は覚えていないのだけれども、あとスキャンダルでちゃったんだっけ?ショーはいささか重かったけれどまあ面白かった。平沢進の音楽は音のアレンジがイマイチで、原曲がパワーダウンしていた点がマイナス。生かしきれないなら使わないでほしい、とまでは思わないものの、もったいないことだ(私は平沢進ファン)。
にしても、RRRのあとのショーならばもう少し軽めでよかったんではと、思わなくもない。
ルートビームの意味
ヅカ版RRRの感想に散見された、主人公はラーマじゃないのばなしだが、徹底的に物語を動かすのはビームであるし、ビームを真ん中におかなければ、さらわれた妹マッリ(瑠璃花夏ちゃんめっちゃよかった、映画の本役に負けていない美声!)との熱い家族愛(実の兄弟じゃないけれど一族のために、他人のためにすべてをかけられるキャラクターであることが魅力)
からのマッリの歌声や、ラーマに鞭を打たれながらのコムラムビームの名曲は、ああも沁みなかったろう。
ラーマは「ビームを捕まえること」によって特別捜査官になり英国の武器を横領して村に返って英国と戦おうという、結構無茶な目的で英国警察の一員となっていて、大きな目的という意味では志は同じであるラーマとビームは、映画ではとんでもないスケールで拳をぶつけあう。
その前段階、物語としてはほんの序章の位置にあのナートゥダンスのシーンはあるんだよねぇ。それがあそこだけ有名になっていたから、てっきりクライマックス的な、物語の中心にくるダンスシーンかと思っていたよねぇ。映画みてびっくりしたもの。
ヅカ版でもあそこは最も盛り上がるシーンに仕立て上げられていたけれども、あのシーンもあのシーン以外も、結構映画に忠実で。これが実現できるのがタカラヅカのすごいところだ。
映画ではジェニー(舞空瞳)はもっとちょい役で、ナートゥダンスのシーンのあとはモブになる。
かといってマッリをヒロインにするのも違う。映画じゃ泣いて歌うもっと幼い子だったし。ラーマの婚約者シータなんて後半急に出てくるほぼ台詞のない役だったし。
なのでヅカ版でのヒロインはやっぱりジェニーしかなくって。
長い映画のわりに役が少ないRRRをヅカ版にするには、やっぱり、無茶無謀に立ち向かう勇敢なる者ビームが主役。そのビームが映画においてもあこがれた存在であるジェニーがヒロインで…とした舞台版は映画版を見て楽しんだ自分にとっても、とてもよい舞台だった。
歌がいい
礼真琴だけではなく、みんな歌がいい。星組は強いねぇ。
映画の音楽がどれもよかったので、日本語版も思いのほか言葉がハマってよかったなぁ。小桜ほのかちゃんが、この物語の最凶女、インド総督の妻を実によい加減でやっていたのは安定。私は彼女が愛嬌のある意地悪な女役をやるのが好きなんだけれども、今回の役はとてもじゃないがかわいげのない極悪人である。だけれどもヅカ版ではかなり表現がまろやかになっていたワ。
日本人はキラキラ西洋貴族のコスチューム大好きだし、西洋貴族の話が好きだし、英国王室大好きだけれども、数十年前まで世界の1/4を文字通り征服していた英国の、そのきつい支配を受けていたインドが、いまもなお、その当時の物語を描く際に、英国人を容赦なく悪人として描くことについては、日本人としてもう少し背景を学んでおかねばならないと感じた。
そうした点においても、このRRRという作品は、元の映画を観ておく方が舞台を楽しめるかなと思った。
礼真琴のコムラムビームを聴きながら、私はあの映画の同シーンがまざまざとよみがえってきたからねぇ。当然ながら作り手も同じ感覚でいると思うし。
パワー!暁千星
ありちゃん!
ありちゃんってやっぱり手足の長さパネェな、と思った。あらゆるシーンで脚の長さに目がいってしまう。ひげも似合っていたし、低めの声でのせりふ回しもスッと入ってきて、なんかますますありちゃん…素晴らしい…
ずっと見ていられる間違いないスター。