隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

新人公演の非公開化について考えた

いま一度、新人公演のライブ配信をやめることについての検討はアリなのかもしれないと思った話。

これまでの話

2021年 雪組 東京宝塚劇場CITY HUNTER』が、新人公演の全編ライブ配信としては初だった。
これの背景には新型コロナウィルスの世界的流行があったわけで、「世界的な感染症の流行(終息の見通し立たず)」という状況が発生しなければ今現在も、新人公演のライブ配信は解禁されていなかったのかもしれない。

本公演のライブ配信についても、劇場でのライブ中継のみであったものを拡大したかたちになったのはコロナ禍の影響があったからこそであり、おそらく本来はこのタイミングでやる気はなかったと思われる。

本公演のライブ配信

すっかり忘れていたが、もともと映画館でのライブビューイング自体は早くから実施されていた(調べたら2007年~)が、コロナ禍によるやむを得ない状況が発生するまで、PC/スマホ端末での視聴が可能なライブ中継の解禁はもとより、いまも解禁されないスカステでの生中継すらやらなかった(専門チャンネルだから普通にあっていいよね、と前々から思っていた)のは、宝塚歌劇団阪急阪神ホールディングスのグループ会社であり、阪急阪神ホールディングス阪急阪神東宝グループの3つの団体のひとつであって東宝とお仲間だから…なのかな?
東宝系映画館でのライブビューイングにサービスを限定することにグループ的メリットと義理の両方を満たせたわけだし。株主ファーストは上場企業のさだめだし。

ライブ・舞台中継を積極的に売りコンテンツとしているWOWOWは、舞台中継すら千秋楽の生中継をはじめている。もともとWOWOWのカメラマン、特に音楽ライブのカメラワークには定評があって、このチームが舞台中継もやっているのかわからんけど、めっちゃいいのだ。

本公演のライブ配信は…

2020年7月の花組公演「はいからさんが通る」から全編ライブ配信を開始したタカラヅカ。新型コロナウィルス国内感染者発生の報道が2020年1月からで、この年の夏はまさにパンデミックだった。
あの頃の細かいことをもう忘れているけれど、現役ジェンヌもOGも、なんかアルカイックスマイル浮かべているような独特なテンションで、ラジオ体操とか合唱とかの配信をやってたっけ。
ヅカ以外でも無観客での公演や配信などの活動が積極的に模索されていた時期があった。

いつか公開はされたのだろうか

話をもどして。
新人公演というコンテンツは今も、アイドルやミュージシャンの「ライブ」に対しての「ファンミ」みたいな、対象を限定したイベントなのだと受け止めている。
「このノリや意義をわかってくれる人向けなので、わかる気のない人、何か意見や理屈こねたい人、とりあえず否定したい人は絡んでこないで」という真のファンに向けたコンテンツとして有料公開されている新人公演だと、私はそうとらえている。

価格が安いのは、内容が本公演を短く編集したバージョンであるということ、主演者が本公演の主演者より格下でカネを取れない若手だということに由来していると解釈している。
それらは新人公演がプロの公演であることを否定するものではない。
お笑いライブでもなんでもそうだが、出演者や尺によって価格は変わるものだ。大きくは出演者のネームバリューが影響し、そもそもネームバリューを上げていくための若手公演は「まずみてもらう・みつけてもらう」と「みる・みつける」という関係のマッチング目的の比重も増す。ヅカに関わらず若手公演や学生公演は、この目的の比重の違いが重要なのだなと思っている。

なぜ、2021年当時から新人公演のライブ配信には慎重派がいたのだろうか。本公演のライブ配信解禁とは少々温度が違っていたのは確かだ。

新人公演とは新酒である

新酒は新酒なりの楽しみ方があって、寝かせては損なわれるフレッシュな味わい・香りは時間とともに失われ、異なるうまみがあらわれる。
世の人が若手の公演や別箱の若手主演ものや新人公演を特別な目で楽しむ感覚とはまさにこの、新酒を味わうそれと近いのじゃないかしら、と。

だからこそ、○年物のワインがいいわとか、産地はどこがいいわとか、シャルドネが好きなのとか、重いのが好みよ なんていう客が新酒会場にウッカリはいってこないよう、
「混ぜるな危険」という感覚が、ファンにはあった(いまもある)のではないかしら。

新人公演は2回あるべきだ

解決方法はわからないが、ライブ配信を観てつくづく思うのは、色々ありあまっていてかつその時だけの「未成熟で若いフレッシュな時期しか発揮されない光」がビシバシでる新人公演は、「最低でも」東西2回あって初めて深みがでてくるものではないかと、そう思う。
これが、本公演期間中にやらんでもよくないか?とはずっと思ってた。千秋楽の翌日以降でもいいじゃん(まったく負担の軽減にはならないが…)。
まあこの辺の検討は内部をよく知る歌劇団内でも、ずっと議論され様々な意見が出続けているものと思う。何をどうしてもメリットデメリットはあるだろう。
理想を言えば新人公演だけで7日間くらいはやりたかろう。

別箱とトップ以外主演公演の問題に脱線する

ただ、若手中心の舞台、それも客を入れての舞台はもっとあっていい。今と全く違うかたちにしてでも。

礼真琴が別箱主演をひとつスキップして休演したことは大騒ぎになったけれども、ナンデ?別にいいじゃんね、と思うのは、トップスターの主演公演を減らし別なスターが主演をもっととる体制の方がみんな実はメリットがあるのではと思っていて。
地方にトップスターがやってくることが前提でカネが回る興行主(博多座とか)にとってはウーンという状況は理解できるが、そこは歌劇団が「トップスターだけじゃないんだぜ売れるスターは」とプレゼンしていかないといけない。

まあ、「トップ」という名称が足かせになるいい例と思う。序列ができていると一番上を欲しがるのが人情。でもトップ以外主演でも満員にできるよという実績がたくさんあったら、「誰がきてもタカラヅカなら客席が埋まる」と地方興行主が信用していたら、「全国は別のスターがいくよ」をチケット売上的にも肯定的にとらえられる日がくるかもしれない。
ただこれは、序列が売りのタカラヅカとは食い合わせが悪いわけで…。我々もまた肩書に弱いので、トップスターは来ないのかい、とは言われ続けてしまうだろうから。
そこでの専科スターなんだよね。ミーマイの博多座公演は今後の可能性を広げる試金石になっていたんだろうなとあらためて思う。

そのとき非公開になっても

客席に客がいるクローズドな舞台と、それがライブ配信されることは、舞台にたつ側にとって相当違う風がふいているのかもしれない。それは観客が思っているよりもずっと。

そしてふと思う。オンラインによるライブ配信をやめたほうが、案外役者にとってはやりやすいのかも?と。
観てほしい関係者が劇場に来られなくてもみられるように、を実現するには、関係者専用配信を実施すればいいし(実際そういうのはヅカ以外ではある。ヅカも内部向け録画はあるだろうし。)

負荷軽減のために新人公演をやめる というのは、なんというか本末転倒感がぬぐえない。誰も望まない事態なのではないかという思いである。


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