隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

宙組を観て歌舞伎を観た9月

先日、宙組『『シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-』~サー・アーサー・コナン・ドイルの著したキャラクターに拠る~』『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』をようやく観劇。千秋楽のライブ配信は視聴できなかったので、1回きりの観劇となった。割と普通のことなのに、ヅカ生観劇に慣れてしまうと「1回だけ?」となってしまう不思議。

宙組だろうとどこだろうと

同伴者がいる観劇者はどこだってうるさい。まーうるさい。開演前の劇場内も普通にざわざわしていて、なんかもう無理なんだなと思った。
にわかに一つ、思っていたことがあるのだけれども、前も書いたかもしれないが、やっぱり一部の観客は「会話はお控えください」の意味が伝わってないのではないかということ。
「会話はお控えください」=「会話をやめてください」という意味だということは、学校の試験にも出るような日本語であり、はっきりと「やめろ」と言っている意味のアナウンスなのだけれども、ど~も、「控えてるわよ、だから静かにしゃべってるんじゃないの~」みたいな声がね。
冗談かと思ったけれども、控えてるからちょっとしかしゃべってないよ!て本気で勘違いしている輩を目撃してしまった以上、これは一定数、日本語力に問題がある層がいる気がしてならない。

そして今月歌舞伎座で、ああうまいなあ、と感動したことがあった。
歌舞伎座は今回2階席で観劇した。俯瞰で見下ろすことになる舞台正面に劇場スタッフが通路に立つ。そして宝塚歌劇のスタッフが持つようなあの注意事項を絵にしたパネルの、2~3まわりは大きな白いパネルを、2つに折りたたんだ状態で手にし、開演直前にさっと掲げる。2階席でも同様に、通路一番前のところにスタッフが並び、そこから1階席と同じタイミングでパネルを抱え上げると、スッと開いて大きなパネルに。
そして、前かがみにならないでね、喋らないでね、携帯電話きってね、という意味の注意をまるで台詞のように、一つの見世物のようにきっちりそろえてみせるから、自然と観客はそれに注意する。松竹の良い知恵だと思った。劇場スタッフの態度が美しいとこちらの背筋も伸びる。

ホームズとデリシュー感想

宙組の公演、SNSの反応は好評で、あの微妙なマカシャンペンライトの販売も、「ファンがデコる」という展開を迎えたことによって大成功に。
愛あるお客さんがきれいにデコって写真をアップするものだから、あの無垢なままだと卑猥にすら見えてくる不具合が私に発生した事をここに記しておく。

まずホームズは、実によくまとまっていた、見ごたえある舞台だったと思うけれど、無粋な私は途中飽きてしまい、女王陛下の前で狙撃、のあたりの場面ではちょっとウトウトしてしまった。
舞台装置、ステキなんだけど、そこまで鎖をモチーフにしなくても、とは思った。開幕時の夜のロンドンの街並を模した様子はとっても綺麗で、窓の明かりにワクワクした。

アイリーンのかつらはポスター観たときから感じていたけれど、生で観ても顔に対してちょっと大きくみえた。潤花の顔が小さいのかなんなのか、顔が埋没してしまう感じ。デザインはいいのに。

ヤードのメンバーや街の子供たちはもうちょっと観たかった。宙組は名前と顔が一致しない子も多くて、名前をあげることができないが、どの場面にもどのグループにも必ず1人は目立つ子がいるなぁと感じた。

あと、アイリーン演じる潤花はいいんだけれども、アイリーンの役柄がちょっと既視感。これアイリーンアドラーである必要ある?みたいな。
先日のホテルの作品となんか似通ったキャラにもみえた。もっと悪女寄りな、こうルパン三世の不二子じゃないけれども、愛嬌ある悪女キャラかと思っていたのに、悪い女感は出の場面のみで、男が放って置けない弱さを持つアイリーンアドラーであった。あとやっぱり、かつらもだけれど、ポスターでも着ていた黒っぽい衣装が重そうで、これまた中身が小さくみえてしまった。ドレス、ヒダ多すぎよ。

ホームズ演じるマカゼのせりふ回しは、マカゼ節。この人は滑舌が悪いようでそうでもないし歌は若手時代からものすごいレベルアップで、丁寧に歌いこなし、器用であり努力の人だなと思う。でも身体の構造上、独特の音が出るよねって感じ。芝居とショーだと、芝居の方がこの人はいい。

他キャストについて、
芝居の桜木みなとは無個性に感じる。真ん中を立てる芝居ともいえるが。一転ショーは、なんでも出来る人。おまけに客席への視線配りやアピールが丁寧で目立った。

加減のよさ、キャラとせりふ回しや声色がぴったりきていたのが芹香斗亜。私はこの人はもう旬を過ぎてしまったんじゃ、と数年前感じたこともあったけれども、とんでもない。今作ビカビカに輝いており「タカラヅカ版モリアーティ」は大成功と思う。
いい意味でキキちゃんぽさが消えてて、役として存在していた。

潤花はトップ娘役に相応しい。
若いんだから酷使するよお披露目だもんね感が強くて超がんばれ怪我に気をつけてと思った。
歌の、高音出すとき発声切り替えるあの感じはしんどいのかな?と感じた。何もかものびやかに豊かさを象徴できる人と思う。

衣装と印象

初日からチラリと話題になった、ショーのアダルトな場面。私の注意を引いたのはそこの演出の話ではなく潤花の衣装が、さくらちゃんのDSで使用された、あの赤い衣装だった件。

よりヘルシーな印象を与える潤花が着用してあのシーンで動くからこそ、いけないものをみさせられてるかのような、不健康なエロさが際立ったのが面白い。

コケティッシュな、蠱惑的な笑みもみせる美園さくらはむしろしっくり着こなし、セクシーであっても不健全的なエロさなんて意識させられなかったのに。
個性って大事なんだなと考えさせられた。

※どっちも好き

歌舞伎は四谷怪談

宙組を観た数日後、チケ難の9月歌舞伎第三部を観劇。
話題独占、二度と観られぬと思われる、仁左玉コンビの名作いいとこ取り上演で演目が四谷怪談だもの、絶対に観ておかねばと思った。
これが、仁左衛門演じる伊右衛門の色悪ぶりが史上最高、過去最高といえる、凄まじい出来であった。

この人は77歳。だか舞台姿は常に今がいちばん美しいいい男なのである。
10年くらい前に、新橋演舞場の観劇に早めに向かったところ、楽屋口で、真っ白な大きめの手紙を握りしめて入り待ちをするマダムがいて、彼女の手のなかのそのお手紙の宛名には、とっても綺麗な字で大きく、片岡仁左衛門様とあったのが遠くからでもはっきり読めた。
それを見てこちらもときめいたのを思い出す。

極付(きわめつき)をみせる歌舞伎

いま歌舞伎は、本来、昼夜二部制であったのを三部制にしている。この日の三部は18時開演で20時10分が閉幕だったかな、休憩20分で、休憩後は約20分で、休憩前に1時間以上やって、休憩挟んで20分足らずもう1シーンみせて終わり。休憩後の幕が短時間で終わるのは歌舞伎あるある。
2階一等席で観たので15000円のチケット代。
1階席が埋まってたのでしぶしぶ2階だったし、実際に観る芝居は2時間ない。お高いのである。

が、観たあとではちっとも高いとは思わなかった。お岩を演じる玉三郎も、あの、下半身どこに埋まってんだろっていう、ペタッと座るあの様子、やつれていても武士の娘らしい立姿に、もう、いま目を瞑ると蘇ってくる凄惨な死に際…。

歌舞伎の生き残りも掛かっている舞台。
夢夢しい世界を繰り広げる宝塚歌劇とは種類の異なる世界だが、どちらにも、明日の幕も今日と同じく開くように皆、真剣であった。




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