宝塚でもたびたび上演された「赤と黒」とは、原作は同じなだけで脚本・演出は違うフレンチ・ロック・ミュージカルということで…
ロクモみたいなもんかなって期待してたけれど、一幕開幕直後にやっぱりロクモやん、てほどのフレンチロックミュージカル感。
キャラやストーリーは分かっている前提
フランス人にとっては定番なのかしら、赤と黒って。
それくらい、物語そのものとか各キャラ設定の説明は吹っ飛ばして、
感情表現を歌いまくりであった。
ありちゃんのキラキラが引き立っていて開幕から大勝利。
礼真琴×暁千星の組み合わせも華やかで。
2人が並んで立つと、ありちゃんのスタイルの良さが際立つが、こっちゃんが見劣るんじゃなくて、ありちゃんより背が低い点も逆にこっちゃんのチャーミングさやジャニーズ的イケメンさとして魅力が増す。
相性がいいんだな。
有沙瞳のレナール夫人
夫が紫門ゆりやで、3人も幼い子供がいて。
ある日やってきた若い屈折イケメンと不倫するんだから、彼女がどれだけ純愛を叫ぼうがちゃんちゃらおかしい。そんな難しい役について、あっちの赤と黒ではやけに清らかな若奥様として描かれているが、こっちの赤と黒では、ものすごく艶っぽい大人の女。有沙瞳しか似合わないんじゃってくらい絶妙だった。
2幕に出てくる、ジュリアンの2人目の女マチルドと良い対比だった。
あと歌うま。
紫門ゆりやのやりかた
愛のない夫婦として描かれるレナール夫妻だが、愛とか夫婦のあり方がすれ違ってるだけで、女の望む男じゃないだけって感じのレナールさん紫門ゆりや。
最初はちょっととぼけたおっさんにみえるが、舞台全体、芝居全体のなかのレナールという役の加減みたいなのが完璧なゆりさん。塩梅がいいというのか、やり過ぎず出過ぎずでも確かな味わい。好き…。
1幕における真犯人のようなメイド役、瑠璃 花夏ちゃんもうまくてとっても印象に残った。
マチルドは魔チルド
詩ちづるを久しぶりに堪能。
出だしからぶっちぎりヒロイン感が強くて声が良くて。2幕前半で礼真琴ジュリアンとデュエットを歌うがこれがすごくいい。
このデュエットの後半、レナール有沙瞳も入ってくるんだけど、ハーモニーは美しいのに有沙瞳がはいってくると微妙な不協和音なの。全員歌上手いのに。ジュリアンを中心とした三角関係だからなのよね。うまい演出。
詩ちづるの舞台姿、マチルドとしての姿は王道のタカラジェンヌの娘役らしくて、メイクもすごく綺麗だし、こんなに素敵だったっけと何度も見惚れた。
お衣装とダンサーの演出
ロミジュリっぽい。
フレンチミュージカル界も、ロミジュリ以上の作品を生み出したくて試行錯誤しているのか。
それともこの赤と黒作ってるのが単に同じ人たちなの?というくらいに。その辺の事情よくしらないけれども、全体的な構成(概念のような存在のダンサーとか、派手な衣装とか、色の対比とか難曲とか)がロクモというかロミジュリと同じ系統。
ビジュアル系との親和性
礼真琴が上手くなければ成り立たない舞台だったな。
礼真琴のジュリアンは出だしから病んでるというか、ふるまいと言動はナポレオンを偏愛するコンプレックスの塊のキモオタなはずなのに、ひとり部屋で鬱屈せずに世界でもがいた者として昇華されてるからか、このジュリアンは最初から疲弊していたのかも。
あっちの赤と黒のジュリアンは抗って戦いを挑んでいるというのか、成り上がってやる、みたいな反骨精神と、それにそぐわぬ世間知らず感とがあったなぁって記憶だけれども、こっちの赤と黒は、登場した時点で、彼と彼の生きる世界との勝負はついている。だから最初から、礼真琴ジュリアンは、なんか病んでたのかなと。
それか、礼真琴がやると「運命に流され翻弄され」感が強いのかな。ナポレオン愛をみせるとき以外はちょっと状況に流されてる人にも見えた。
ジュリアンといえばの袖の膨らんだ白シャツ。白い化粧に目のまわりの影が美しいメイク。
ジュリアンの、最後の裁判場面において、礼真琴ジュリアンは答弁する。自分に罪があるとするならそれは2つ、と。
「持たざる者として生まれながら全てを得ようとした罪」
「そしてもうひとつの罪は、愛を得ようとした罪」
この台詞、これこそがジュリアンのもがき、生き様で。このときの礼真琴といったら…。
喜劇か悲劇か
芝居がそうだから仕方ないんだけど、2人のヒロイン、レナール夫人と、マチルドとの最後の3人でのダンスはこう、元カノと今カノのバッティング感があってちょっと…笑。
赤いびらびら衣装の悪役夫婦、ヴァルノ夫妻のひろ香 祐&小桜ほのかちゃんが、芝居のなかで悪いんだけどいちばん夫婦仲がいいっていうのが皮肉がきいてる。