隣のヅカは青い

ヅカファン歴は30年ほど。しかし観劇デビゥは2019年から。それほど遠い宝塚についてのブログです。

夢介から50両貰いたい女S

雪組東京公演を観た。
「夢介千両みやげ」はふる~~い大衆娯楽時代劇小説が原作であるらしい、とだけ知っていたが内容は予習せず。ショーも予習せず。
での観劇感想は主に

・彩風咲奈って、特大級のスターなのでは
・綾凰華への餞別に涙
・(主に芝居において)朝美絢の使い方の加減はこれくらいがいい
・ソラカズキィィィ
・いま、春が来て きわちゃんはきれいになった 去年よりずっときれいになった

の5つ。

彩風咲奈って…

まず夢介。芝居全体は率直にいって、シティーハンターと微妙に印象がかぶる作品となってしまい、損したなと思う。そもそもシティーハンター水戸黄門的というか、お約束展開がしっかりあるマンガなわけで、当初ここまでかぶる作品が続いちゃうなんてこと、歌劇団上層部もわかっていなかったと思う。

で、彩風咲奈は何でもできる子であり、こういうのも得意。
この夢介は無敵のスパダリみたいなキャラなんだけれども、道楽修行をするだべ~っていう、あくまで自分自身の高いポテンシャルについて無自覚な田舎者でなくてはならない。
で、その朴訥な田舎育ちで培われた価値観がしっかりとあって、朴訥×田舎といいつつも、遊んで来いと託されるカネが1000両なんだから、豪農というか地元の名士の子と思われる。
そりゃ地元のオンナにモテてきたはずで、なので女さばきもうまいんだね。遊び人の総太郎(朝美絢)とは違うモテ方でなければならず、そこがうまかった。

着物の着こなしも美しくて、低い位置の帯でも足が長い。肩がしっかりしてて映えてた。
全キャストの中で最も男前の着こなしと体格、ビジュアルが良かったのは縣千であったけれどもあれは体格の勝利。

ひたすらおいしく綾凰華

ここまでやりがいのあるお役と、ショーでも花道を通って、ステキだった~。
友達の初タカラヅカ観劇がシティーハンターであり、その中で友人が堕ちた相手が綾凰華であったので、今回の卒業発表は衝撃であったようで…。そういうものだからねタカラヅカは。でもあらためて、綾凰華の魅力であるあの柔らかさは唯一無二。男役は硬質で、骨を感じさせるようにみんな作っていき、娘役は逆にやわらかさ、たおやかさを演出していくものだが、彼女は男役でありながら柔らかい。それでいてしっかり男役。ともすれば判子を押したような似た感じの男役ができあがってしまう世界のなかでも、綾凰華の男役像はとても貴重な魅力。その有終の美を堪能した。

銀橋で歌う彼女の、彼女自身の物語のような歌詞に合わせての姿にまずほろり。それで終わりかと思いきや、黒燕尾でまた彩風咲奈から歌い継いだので、とてもとてもぐっときた。泣いてしまった。

朝美絢の使い方

彼女、今回は芝居・ショーとも完全な脇役で、3・4番手以下時代と変わらない扱いに見えた。この人の場合、研15以上、17とか18とかに、とっても魅力が増すタイプなのでは、と何となく感じているのだけれども、トップへの階段はそこまで待ってはもらえなさそうなのかな。青天でもキレイなんだけれども、もう少しただれた湿気を感じる色気があった方が良い役であったと思う。なんせひとり孕ませているわけで。

芝居はモテモテくそボンボンの役で、これで夢介がただのド田舎者ならばちょっと美味しい役なんだけども、夢介は周りのきれいなおねぇさんたちにガチ恋系でモテちゃう役だから、対比するダメで悪いヤツ。やりようによってはかなり情けないイヤな奴ってだけで終わってしまう。
大体、朝美絢演じる総太郎のエピソードって、玄人な女性にモテちゃう金持ちチャラ男なのに、(それまでセフレ扱いしてた)地味で器量が悪くて地位もない下女が妊娠でもって結婚に持ち込むわけで……、こういう下女のような女を現代ではプロ彼女っていうんじゃないの?てちょっと思った。

夢介があちこちの小エピソードで50両バラマキしてる話の積み重ねでできている本作で、あーさは思ったよりも脇役であった。彼女は2番手だから~とかいう事情を無視してみればいい役、いいポジションなんだけれども、思ったほどの出番ではなかったなという印象。かといってほかの誰かが番手以上に出てたかというと、夢介、お銀を除いて、あんまり突出した2番目の役っぽい役はなく。

一方でショーでも、アレ?って感じであんまり出張ってなかった気がする。前日の舞浜で、ちなつさんがバーン!と大活躍していた印象が強すぎたせいもある(舞浜は更生人数半分だし)のは大きいかもしれないけれど。
綾凰華への餞別に場面を割いたにしては、彩風咲奈は和希そらとより絡んで踊っていた、ようにみえた。
拍手は大きかったけれどね、歌、最後に上にはね上げるようなあの癖はあんまり好きではない……。あれが好きってファンもいるんだろうけど。

和希そら・ザ・スター

いや~素晴らしいネ!!
この人は確かに宙組育ちで、雪組とはちょっと違うものをお持ちなんだなあ、とこうして本公演で観て感じた。芝居じゃ美味しい三太役。最後の方、狂言回しのような役になってるのには少々、演出に疑問。だってそのあともだらっと芝居あったしねぇ。でもいい役貰ってたなあと思う。

で、ショー。もうずっと見入ってしまった。咲奈ちゃんも発光しているけれど、ソラカズキはなにをやってもうまいねぇ。さらにこのショーパートでは彼女の持つ宙組で培われたアダルトな魅力・オーラがよりふりまかれていて、目立ちまくっていたように思う。今の白っぽい髪の色も大変セクシー。
ショーは彼女だけではなく、場面全体としてひたすらカッコよくてカッコよかった、白黒お衣装で4拍クラップするあの、あの場面!!和希そらはチェックのシャツにネクタイひっかけた白系お衣装なんだけれどもアー!!カッコイイ!!!!

座席位置が上手寄りだったので最後のフィナーレ、羽根背負ってみんなが銀橋に並ぶところでは、ちょうど目の前のラインに和希そらがいたので、とっても嬉しくなった。

朝月希和の役者魂

あと今回、ポスターの時点で変化ぶりが素敵だったきわちゃん。彼女は地の顔を忘れるほど、メイクが上手で役柄に溶ける人だなあと思う。
私は彼女が、きれいだなあ…としみじみ感じたのだけれども、その印象を与えてくれた過半数の要素は、役への感想だった。いや、ほんとに…スカステで垣間見てた下級生の頃と比べたら、どんだけきれいになったんだこの人は、というくらいに美しい。
また前回のショー「Fire Fever!」では羽根衣装がでかすぎて彩風咲奈ほどには着こなせておらず小さな体が埋没しているように見えたこともあったが、今回のショーではしっかりとしっとりとトップ娘役さんで、何やっても穴がない彼女への信頼性はやはりその経験値からくるもので、観ていて安心だった。芝居もショーも。
お銀はかわいい女で、アバズレって呼ばれてて実際に過去はアレだったってことも含めて憎めない女で大変よかった。

彼女はもはや成長がどうのということはなく、進化や変化というレベル。それだからこそ彩風咲奈の亭主関白系にはまってついていけるのではとも思う。

最後に

この雪組公演、芝居の方のコンセプトは明快(明るく楽しい和物)でよいが、少々冗長だった。テンポは歌謡ショーが付いてる演歌歌手の芝居パートのそれと同じで、嫌いではない。
が、もっと小気味よいといい。せめてあと10分短いとねぇ、いいんだけど。たぶん制作側もそう思ってたと思うけど。
もっと言うとこれ30分(CMいれて22分)にして楽しい連載ものになるような題材。1時間40分は少々、後半、頭を抱えてしまった。

ショーは、銀橋使いまくりでおなじみの中村一徳先生。先日の花組ショーでもそうだったけれど、中村一徳先生は娘役を銀橋に並べて出してくれるから大好き!
黒燕尾で男役が団体芸を見せるように、中村一徳先生のショーのように娘役が前に出てきて花を舞い散らかしてくれていい。ほかにも若手やベテランが銀橋にピックアップされる場面が必ずあって、自分のように組子の名前と顔があやふやなものにとってもこれはとてもうれしい。
さらに、ショーにつきものの戦争と平和的アレについても今作ではちょっと違った描かれ方で美しかったし。義務としての軍服はあーさが処理したね。

たぶん評判は割れたろうなっておもうこの公演だけれども、芝居はブラッシュアップ(ていうかもっと小品にしてバウ向けとかに)して再演できると思う。
宝塚の和物は、幕あけにあった洋楽に合わせた踊りがなくてはならないし、こういう演目を継いでいってほしい。




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